大学・短大・高専で、データサイエンスやAIの基礎をどう学べるか。その手がかりの一つが、文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」です。公式の一覧から関西6府県の認定校を数え、府県別の数と使い方を図にしました。
数えた結果、滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山の100校がリテラシーレベルの認定を受けていました。応用基礎レベルの認定がある学校は40校です。
認定制度とは 2つのレベルと「プラス」
大学・短大・高専の正規の課程にある教育プログラムのうち、要件を満たすものを文部科学大臣が認定する制度です。令和3年度に始まりました。認定されるのは学校そのものではなく、学校の「教育プログラム」です。大学院は対象に入りません。
| 区分 |
内容(文部科学省の説明から) |
| リテラシーレベル |
デジタル社会の基礎的な素養として、初級の数理・データサイエンス・AIを学ぶ。大学等のすべての学生が身に付けておくべき素養と位置づけ |
| 応用基礎レベル |
リテラシーレベルの内容を補完的・発展的に学び、自分の専門分野に応用する力をつける。学校全体で開く「大学等単位」と、特定の学部(短大・高専は学科)で開く「学部・学科単位」がある |
| 応用基礎レベル プラス |
応用基礎レベルに認定されたものの中から、特色ある取組を選ぶ。令和8年度からは、プラスの選定は応用基礎レベルだけ |
実施要綱は、認定の要件として次のようなことを挙げています。プログラムの名称・身に付く能力・修了要件・科目などの計画を公表していること、自己点検・評価の結果を公表していること、1年以上の実績があることです。認定は、初めてのプログラムは5年間、それ以外は3年間の計画について行います。
関西6府県の認定校は100校
数えたのは、文部科学省の「認定・選定校一覧」(令和8年8月28日更新、2026年10月18日確認)です。一覧は全国を9つのブロックに分けた表で、近畿ブロックの表から三重県の8校を除き、6府県の行を数えました。数えたのは学校の数で、1校に複数のプログラムがあっても1校とします。
関西6府県の認定校100校の府県別の数と、リテラシーレベル・応用基礎レベルの内訳(編集部作成)作成: 編集部 / もとの資料: 文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」
| 府県 |
学校の数 |
内訳 |
リテラシーレベル |
応用基礎レベル |
うち大学等単位 |
うち学部・学科単位 |
| 滋賀県 |
8 |
大学6・短大2 |
8 |
3 |
2 |
1 |
| 京都府 |
20 |
大学18・短大1・高専1 |
20 |
12 |
9 |
5 |
| 大阪府 |
35 |
大学32・短大2・高専1 |
35 |
11 |
7 |
6 |
| 兵庫県 |
29 |
大学21・短大6・高専2 |
29 |
10 |
5 |
5 |
| 奈良県 |
6 |
大学5・高専1 |
6 |
2 |
1 |
1 |
| 和歌山県 |
2 |
大学1・高専1 |
2 |
2 |
1 |
1 |
| 計 |
100 |
大学83・短大11・高専6 |
100 |
40 |
25 |
19 |
応用基礎レベルの「うち」の2列は、両方の単位がある4校(京都大学、京都光華大学、大阪大学、関西大学)を両方に数えています。そのため、足すと40校より多くなります。
設置区分ごとに分けると、次のとおりです。
| 設置区分 |
学校の数 |
うち応用基礎レベル |
| 国立 |
15 |
12 |
| 公立 |
9 |
5 |
| 私立 |
76 |
23 |
| 計 |
100 |
40 |
全国では、リテラシーレベルの認定を受けている大学等が653校、応用基礎レベルがいずれかの単位で288校です(令和8年8月時点、令和8年度の認定結果の別添資料3)。関西6府県の100校と40校は、それぞれ全国の15.3%と13.9%にあたります(編集部の計算)。
応用基礎レベルの40校と、プラスの6校
応用基礎レベルの〇がある40校を、府県ごとに並べました。並びは文部科学省の一覧の順です。
応用基礎レベルの認定がある関西の40校を府県別に並べ、認定の単位とプラスを示した一覧(編集部作成)作成: 編集部 / もとの資料: 文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」
| 府県 |
大学等単位 |
学部・学科単位 |
| 滋賀県 |
滋賀医科大学、長浜バイオ大学 |
滋賀大学(+) |
| 京都府 |
京都大学、京都工芸繊維大学、京都産業大学、京都光華大学、京都橘大学(+)、同志社大学、京都ノートルダム女子大学、龍谷大学、舞鶴工業高等専門学校 |
京都大学、福知山公立大学、京都女子大学(+)、京都光華大学、立命館大学 |
| 大阪府 |
大阪大学、大阪公立大学、大阪電気通信大学、追手門学院大学、関西大学、阪南大学、大阪公立大学工業高等専門学校 |
大阪大学(+)、大阪工業大学、桃山学院大学、関西大学、近畿大学、大阪成蹊大学 |
| 兵庫県 |
神戸大学(+)、甲南大学、大手前大学、関西学院大学、明石工業高等専門学校 |
兵庫県立大学、兵庫大学、武庫川女子大学、関西国際大学、神戸市立工業高等専門学校 |
| 奈良県 |
奈良工業高等専門学校 |
奈良女子大学 |
| 和歌山県 |
和歌山大学(+) |
和歌山工業高等専門学校 |
(+)は、応用基礎レベル プラスに選ばれたプログラムがあることを表します。大学等単位で3校、学部・学科単位で3校の、合わせて6校です。学部・学科単位の+は、複数の学部で認定を受けたうちの一部が選ばれたものも含みます(一覧の注記)。
関西の高専6校は、すべて応用基礎レベルの認定があります。一方で、短大11校には応用基礎レベルの認定がありませんでした。
学部・学科単位では、一覧に学部の名前が出ている学校もあります。関西大学は商・総合情報・システム理工の3学部、近畿大学は情報・生物理工・工・理工・農の5学部、神戸市立工業高等専門学校は5つの学科です。ほかの学校は〇だけで、1つのページに複数の学部の情報を載せている場合があるため、学部の数は数えていません。
リテラシーレベルの+印は、関西ではびわこ成蹊スポーツ大学(滋賀県)にあります。リテラシーレベルのプラスの選定は、令和8年度からは行われていません。
令和8年度に新しく認定された関西の9件
文部科学省は2026年8月28日、令和8年度の新規の認定を公表しました。リテラシーレベル47件(新規46件・継続1件)と応用基礎レベル40件を認定し、応用基礎レベル プラスに2件を選んでいます。このうち、関西6府県の学校のものは次の9件です。
| 学校 |
レベル(単位) |
プログラム名 |
必要最低単位数 |
| 京都府立医科大学 |
リテラシー |
京都府立医科大学数理・データサイエンス・AI教育プログラム |
4 |
| 奈良県立大学 |
リテラシー |
数理・データサイエンス・AI教育プログラム |
2 |
| 長浜バイオ大学 |
リテラシー |
バイオMDASHスター制度 |
2 |
| 龍谷大学 |
応用基礎(大学等単位) |
データサイエンス・AI応用基礎プログラム |
4 |
| 甲南大学 |
応用基礎(大学等単位) |
KONAN 数理・データサイエンス・AI教育プログラムNEXT |
4 |
| 大阪公立大学工業高等専門学校 |
応用基礎(大学等単位) |
総合工学教育と連携したAI×データ活用実践力の育成 |
14 |
| 立命館大学(デザイン・アート学部) |
応用基礎(学部・学科単位) |
データサイエンス+Rプログラム(応用基礎)(デザイン・アート学部) |
4 |
| 桃山学院大学(ビジネスデザイン学部) |
応用基礎(学部・学科単位) |
ビジネスデザイン学部 情報テクノロジープログラム |
24 |
| 近畿大学(農学部) |
応用基礎(学部・学科単位) |
農学部AIデータサイエンティスト養成プログラム |
19 |
全国の新規は、リテラシーレベル46件、応用基礎レベルが大学等単位23件・学部・学科単位17件です。プラスの2件は富山大学(工学部)と熊本大学(情報融合学環)で、関西の学校はありませんでした。
必要最低単位数は、同じ認定の中でも2から24まで開きがあります。プログラムの大きさは学校や学部によって違うので、認定の有無だけでなく中身を見るのが確実です。
令和8年度に新しく認定された関西の9件の必要最低単位数と、目線ごとの一覧の使い方(編集部作成)作成: 編集部 / もとの資料: 文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」
一覧から何が分かる? 目線ごとにできること
高校生と保護者
一覧を見ると、志望校にどのレベルのプログラムがあるかが分かります。一覧の〇は、各校の説明のページにつながっています。計画の公表は認定の要件なので、学校のページには修了要件や科目が載っています。
たとえば和歌山大学の応用基礎レベルのプログラムは、10科目14単位のうち10単位以上を取り、最上位のオープンバッジ(デジタルの修了証)を得ると修了です。龍谷大学は「データサイエンス基礎」と「AI基礎」の2科目4単位が必修です。同じ応用基礎レベルでも、学ぶ量と進め方はこれだけ違います。
高校の授業でのAIの扱いは、次期学習指導要領へ人工知能学会が提言 学校のAIと授業はどう変わる?にまとめています。
大学生
応用基礎レベルは、学部・学科単位で開かれていることがあります。自分の学部が対象かどうかを、まず学校のページで確かめます。修了要件は学校ごとに違うので、必要な科目を早めに履修の計画に入れておくと安心です。
修了証を出すかどうかは学校ごとです。文部科学省のQ&Aは、修了証の発行は認定の要件ではないとしたうえで、就職活動での活用を想定して発行を前向きに検討するよう、学校に求めています。
採用する会社
修了証が示すのは、学生が「文部科学省が認定したプログラム」を修了したことです。文部科学省が本人を認定したものではないと、Q&Aに書かれています。科目と単位数は学校のページで確かめられるので、面接などで学んだ中身を聞くときの手がかりになります。
就活でのAIの使われ方は、就活で生成AIはどこまで使われている? 学生と企業の使い方を調査から図解でも取り上げています。
大阪・関西では 近畿ブロックで取組を共有
文部科学省の一覧では、近畿ブロック(三重県を含む7府県)の地域ブロック代表校は京都大学です。制度のページによると、大学間のコンソーシアムが教材や好事例を共有し、地域ブロックごとにシンポジウムなどを開いています。
文部科学省の制度のページには、関西の学校の資料も載っています。説明会で好事例として発表した和歌山大学と関西大学の取組紹介、令和7年度のプラス選定校の好事例としての京都女子大学(データサイエンス学部)の取組紹介です。
関西の会社とのつながりが見える例もあります。和歌山大学の「データサイエンス実践」では、地元の大手企業から提供を受けたPOSデータ(レジで記録される購買のデータ)を使い、グループで企業の課題に取り組みます。データを提供した企業の担当者が参加する発表会も予定していると、大学のページに書かれています。
今日からできること
- 文部科学省の「認定・選定校一覧」を開き、近畿ブロックの表で気になる学校の行を探します。
- 行の〇を押し、プログラムのページで修了要件・科目・単位数を見ます。自己点検・評価の結果も、公表が認定の要件です。
- 在学生は、自分の学部が対象かと、修了証の扱いを確かめます。
- 社会人は、大学の制度とは別に、総務省の無料のオンライン講座でも学べます。くわしくは総務省の無料データサイエンス講座「演習」が開講 登録は11月30日までにまとめています。
一覧からは分からないこと
文部科学省の一覧と、今回確かめた資料からは、次のことは分かりません。
- 学校ごとの履修者数や修了者数
- 〇だけの学校の、学部・学科単位のプログラムの数
- 各校が修了証やデジタルの修了証を出しているか(和歌山大学のように学校のページに書かれている場合はある)
- 採用で修了がどう評価されるか
気になる学校があったら、〇を押して修了要件までのぞいてみてな。