人工知能学会は2026年10月13日、「次期学習指導要領策定に向けた提言」を出しました。授業時数の見直し、情報教育の進め方、学校での生成AIの扱い、先生と保護者の学びの場づくりについての5項目です。
ただし、これは学会の提言です。学習指導要領を決めるのは文部科学省で、提言の内容が決まったわけではありません。
提言の5項目
提言のPDFは2ページです。5項目を表にします。
| 番号 |
提言の内容 |
| 1 |
各教科の授業時数を一律3〜4%ほど減らして「情報」関係の教科に回す案を、情報教育の集約・体系化として評価する |
| 2 |
情報教育の目的は、操作やプログラミングの技能ではなく、問題を捉えて考える力(プログラミング的思考)を養うこと |
| 3 |
「情報」と国語・算数・数学などを連携させる。「情報のために国語や算数・数学の授業時間を削るべきではない」という議論は、方向性を誤認したものと述べている |
| 4 |
生成AIは禁止でなく、「情報」や道徳で望ましい付き合い方と規範意識を教える |
| 5 |
教員と保護者向けのAIリテラシー教育プログラムを早く広げる |
人工知能学会の提言の1ページ目。項目1・2と、項目3の書き出しまでが載っている出典: 人工知能学会「次期学習指導要領策定に向けた提言」(引用)
提言が前提にしている文部科学省の案
提言は、中央教育審議会(中教審)の教育課程部会が2026年10月5日にまとめた「審議まとめ」を前提にしています。審議まとめには、次のことが書かれています。
- 小学校は、総合的な探究の時間に「情報の領域」を付ける
- 中学校は、「情報・技術科」として大きく充実させる
- 高校は、情報科を充実させる
- 小学校3年以上の各教科の授業時数は、現在35コマ以下のものを除き、一律3〜4%程度を減らす考え方を示す
- 年間の標準総授業時数は、現行を維持する
一律で3-4%程度の時数を言わば「広く薄く」減ずることとなると考えられる。
出典: 文部科学省「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」
3〜4%は、審議まとめの中でも「考えられる」という書き方です。各教科の具体的な授業時数は、審議まとめに「適切なタイミングで示すべき」とあり、まだ出ていません。
予定は次のとおりです(審議まとめの記述。いずれも想定や検討中の内容です)。
| 項目 |
小学校 |
中学校 |
| 新教科・領域の先行実施(経過措置を講ずることが適当) |
令和10年度(2028年度)から |
令和11年度(2029年度)から |
| 全面実施(想定) |
令和12年度(2030年度) |
令和13年度(2031年度) |
審議まとめの本文では、答申や告示の時期は確かめられませんでした。
子どもの授業はどう変わりそうか
学会は、タイピング、プログラミング、グラフ作成、発表資料づくりが、いまは各教科で関連づけられないまま似た内容で行われていると指摘しています。これを「情報」関係の教科にまとめ、国語や算数の本来の学びに時間を回せると述べています。
国語や算数の時間が減る点について、学会は「方向性の誤認」と述べています。国語の引用や出典の示し方、算数・数学の統計的な問題解決と、「情報」の学びはつながっている、という考えです。
学会が情報教育の目的に置くのは、操作の習得ではありません。何が問題で、何が目的かを自分で捉え、データを集めて分析する力です。
学校で生成AIは禁止になるのか
学会は、ニューヨーク市の小中学校などの「利用禁止」を例に挙げたうえで、学校外での接触は避けられないと述べています。学校で教えないほうがかえって無責任だというのが理由です。
文部科学省は、すでにガイドラインを出しています。2024年12月26日付の「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」です。
学校現場での生成 AI の利活用を一律に禁止したり義務付けたりするものではない。
出典: 文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」Ver.2.0
小学校の児童が直接使うことについては、「発達の段階等を踏まえたより慎重な見極めが必要」と書かれています。審議まとめは、道徳科でAIが引き起こす道徳的な課題と向き合うことを重視したとしています。
中教審の特別委員会の2026年6月30日の資料には、次期学習指導要領に合わせてガイドラインを速やかに改訂する、と書かれています。
大阪・関西では
大阪市は、生成AIパイロット校の取り組みを公式ページで公開しています。2026年9月29日付のページによると、令和8年度は次の学校が取り組んでいます。
| 区分 |
学校 |
| 文部科学省事業 C区分(教材実証) |
咲洲みなみ小中一貫校(南港南中学校・南港みなみ小学校) |
| 文部科学省事業 B区分(校務利用) |
今里小学校、横堤小学校、田辺中学校 |
| 大阪市独自(教育利用) |
豊里南小学校、内代小学校、長原小学校 |
大阪市独自の3校は、児童生徒が生成AIと対話しながら、使い方の指導方法や授業での活用方法を確かめる学校です。
咲洲みなみ小中一貫校は、2026年11月11日(水)に公開授業を開きます。大阪市のページは、子どもたち自身が生成AIを使う授業で、参加の申込みを受け付けていると案内しています。
提言の項目5にあるように、先生と保護者の理解が必要だという点は、関西の家庭にも当てはまります。文部科学省のガイドラインも、保護者に生成AIの利活用の目的や態様を伝えること、学校外で不適切に使われないよう周知することを挙げています。
大阪市以外の関西の自治体や学校の取り組みは、今回確かめていないため、ここには書きません。
今日からできること
提言も審議まとめも、授業が変わるのはこれからの話です。家庭と学校でできることを挙げます。
- 学校や市区町村からの生成AIについての案内を読む
- 子どもが家で生成AIを使うかどうかを、まず聞く
- 使うサービスの利用規約で、年齢制限と保護者の同意の条件を確かめる(ガイドラインが確認を求めている点)
- 先生は、ガイドラインの「児童生徒が学習活動で利活用する場面」の例を読む
- 授業時数や実施の予定は、文部科学省の発表で確かめる
提言の項目5が求める教員・保護者向けのプログラムの中身は、提言には書かれていません。
AIを禁止するか教えるかは、決まったことやなくて、これから文科省が決める話やで。学校からの案内が来たら、まず読んどこな。