ChatGPTに下書きを直してもらった志望理由書を、そのまま出願に使っても大丈夫でしょうか。
関西の大学の答えは、ひとつではありません。同じ文章が、出す先しだいで不正行為とみなされるおそれもあります。
しかも時間の余裕はあまりありません。京都大学の特色入試は、文学部や法学部など多くの学部で11月5日に出願が始まります。摂南大学の公募制推薦の前期試験は、11月19日と20日です。
2027年度入試の要項を12大学で読み比べると、扱いは次の3つに分かれました。
認めないと明記3校
- 京都大学
- 特色入試。生成AIが作った文章などの利用を認めず、自筆で作成
- 立命館大学
- AO選抜や学校推薦型選抜など。不正行為とみなす場合あり
- 摂南大学
- 総合型選抜と公募制推薦。採点不可や合格取り消しの場合あり
認めると明記1校
- 近畿大学
- 総合型選抜の情報学部だけ。書類を作る過程全体で活用できる
記載なし8校
- 大阪大学
- 「志願者自身の言葉で」作るよう求める
- 神戸大学
- 「志」特別選抜。志望理由書は本人が作成
- 関西大学
- 総合情報学部は、試験当日の資料作成に限って使える
- ほか5校
- 関西学院、同志社、京都産業、甲南、龍谷
総合型選抜を中心に、公式サイトの要項を2026年11月2日に確認しました。すべての学部と方式を読んだものではありません。
大阪公立大学は、公式サイトがシステム障害で止まっているため、要項を確認できませんでした。
「認めません」の言い方にも差がある
禁止の3校を読み比べると、線の引き方が少しずつ違います。
立命館大学のAO選抜の要項は、出願書類について「作成にあたって、生成AI等を用いることは認めません」と定めました。本人が作ったものとして出せば、不正行為とみなすことがあるとも続けます。2次選考の前に準備する資料も同じ扱いです。
摂南大学はもっと具体的で、志望理由書やプレゼンテーション資料への使用を禁止し、処分の中身まで示しました。
摂南大学の2027年度総合型選抜の要項にある、生成AIの利用禁止の案内出典: 摂南大学 2027年度 総合型選抜 学生募集要項(引用)
京都大学の書き方は、この2校と角度が違います。
志願者の責任において、自身で考えて自筆で作成してください。志願者以外の者(生成AIツールを含む)により作成された文章等を利用することは認めません。
出典: 京都大学「令和9年度 京都大学特色入試 学生募集要項」
生成AIを「志願者以外の者」に含めたのが特徴です。親や塾の先生に書いてもらうのと同じ、という整理でしょう。
では、誤字の確認やアイデア出しならよいのでしょうか。3校とも、そこまでは書いていません。立命館と摂南の文言は、作る過程で使うこと全体に読めますが、京大の文言は文章そのものを指しているようにも読めます。とはいえ校正だけならよいと書いた大学は無いので、この3校を受けるなら使わないのが無難です。
近大情報学部と関大総合情報は、使う力を見る
反対側にいるのが、情報系の学部です。
近畿大学の情報学部は7月24日、総合型選抜での方針を公表しました。要項には「各出願書類作成における一連の過程で、生成AIの活用を認めます」とあります。きっかけは、「入試で生成AIを活用したシステム開発の経験を示しても問題ないか」という高校生からの問い合わせでした。使わない受験生が不利にならないよう配慮する、とも説明しました。
ただ、近大の要項で生成AIに触れているのは情報学部の箇所だけ。ほかの学部も同じだと考えるのは早計です。
関西大学の総合情報学部は、書類ではなく試験当日に使わせます。AO入試の情報リテラシー評価型では、2次選考で110分ほどかけて発表資料を作り、生成AIも使えます。
関西大学総合情報学部のAO入試要項。2次選考の資料作成に生成AIを使ってよいとある出典: 関西大学 2027年度 AO入試 入試要項(引用)
AO入試のガイドブックに載った評価者のコメントが、なかなか率直です。形式面はおおむね全員が高いレベルで作れていた一方、明確に差がついたのはテーマへの洞察の深さや論理の構築力でした。
見た目はAIでそろう。差は、その先の中身につく。入試の現場で、それがもう見え始めています。
書いていない8校も、自由ではない
8校の要項に、出願書類と生成AIの関係を定めた文はありません。使ってよいという意味でしょうか。
そうは読めません。たとえば大阪大学の要項は、本人が作る書類を「自らの考えや経験、これから取り組みたいことなどを志願者自身の言葉で」作るよう求めました。神戸大学の「志」特別選抜は志望理由書を本人が作るものとし、面接でも記載の内容を質問します。関西学院大学の探究評価型入試は、出願書類に不正があれば受験と入学の資格を取り消すと定めました。
文部科学省は、大学が授業などで定めた生成AIの指針と整合する入試のルールを作ることを期待し、要項で示す方法を例に挙げました。紹介された3大学の対応には、利用の有無を評価に影響させないものから、特段の指示がない限り認めないものまで幅がありました。つまり国は一律の線を引いていないので、大学ごとの差はしばらく続くでしょう。
高校向けの文科省の指針も、コンクールやレポートについて、生成AIの出力をそのまま自分の成果物として出すことに注意を促しています。不適切か不正に当たる場合があり、学びも得られないという理由で、保護者への周知も求めました。
複数の大学を受ける親子がやること
- 受ける学部と方式の要項を開き、PDFの中を「生成」で検索する。共通の冊子と学部別の冊子の両方を見ます。
- 記載が無ければ、大学の入試の窓口に聞く。「誤字の確認」「アイデア出し」のように、したいことを具体的に伝えると答えをもらいやすくなります。
- 受ける大学で扱いが違うなら、いちばん厳しい大学に合わせて書く。
- 書いた内容を、家族を相手に自分の言葉で説明してみる。
見落としやすいのは3番です。活用を認める大学のために作った下書きを、禁止の大学へ転用すると、ルールに触れるおそれがあります。出願書類の使い回しは受験生には自然なことなので、なおさら注意したいところです。
AIに書いてもろた志望理由は、面接では誰も代わりに答えてくれへんもんな。