裁判まで行っても、1人1,000円だった例があります。
個人情報が漏れたという知らせが届くと、頭をよぎるのは「で、いくらもらえるの」でしょう。ところが、10月に漏えいを発表した9つのサービスのお詫びを比べると、見舞金を示したのは2社だけ。skyticketも10月30日の時点で、補償の案内を出していません。
では、裁判で争うといくらになるのか。裁判所の公開資料や報道、法律事務所の解説で確認できた額を高い順に並べると、上と下で35倍の開きがあります。
判決の額を高い順に並べる
| 順 |
漏えいの件 |
判決 |
1人あたりの額 |
漏れた主な情報 |
| 1 |
エステのTBC |
東京高裁、2007年 |
3万5,000円 |
氏名、住所、スリーサイズ、施術コース |
| 2 |
宇治市の住民票データ |
大阪高裁、2001年 |
1万5,000円 |
住所、氏名、生年月日、世帯主との続柄 |
| 3 |
Yahoo! BB |
大阪高裁、2007年 |
5,500円 |
住所、氏名、電話番号、メールアドレス |
| 4 |
ベネッセ(関連会社に命じた判決) |
東京地裁、2018年 |
3,300円 |
氏名、住所、電話番号、子どもの生年月日 |
| 5 |
ベネッセ(差し戻しの判決) |
大阪高裁、2019年 |
1,000円 |
4と同じ |
額には弁護士費用の分も入っています。慰謝料だけなら、TBCは3万円、宇治市は1万円です。TBCの東京地裁の判決では、14人のうち1人だけ2万2,000円でした。4は双方が控訴した時点の額で、どれも過去の判決ですから、次の漏えいで同じ額になるとは限りません。
額を分けたのは、漏れた中身と実害
いちばん高いTBCの件で漏れたのは、スリーサイズや施術コースのような、人に知られたくない情報でした。会社のサイトで約5万人分が見られる状態になり、悪用の二次被害も出ました。
宇治市の件は、住民票などのデータ21万7,617件を、再々委託先のアルバイトがコピーして名簿業者に売りました。大阪高裁は、具体的な被害は示されていないとしながら、いつ誰に買われるか分からない不安を精神的苦痛と認めました。
Yahoo! BBの大阪地裁の判決は、漏れた情報は「秘匿されるべき必要性が必ずしも高いものではなかった」とし、全会員に500円の金券を配ったことなども考えて、慰謝料を5,000円としました。弁護士費用を足した一審の6,000円が、二審では5,500円になりました。
道のりに驚くのはベネッセです。10万円を求めた男性は、神戸地裁姫路支部でも大阪高裁でも敗れました。高裁の理由は、不快感や不安を抱いただけでは損害賠償を求められない、というものです。2017年に最高裁がプライバシーの侵害を認めて審理のやり直しを命じ、2019年の大阪高裁の判決は1,000円でした。法律事務所の解説によると、住所や氏名などが一部ホームページなどで開示されていたことも考慮されたといいます。
宇治市、Yahoo! BB、姫路の男性。額の節目になった判決の多くは、関西の裁判所から出ています。
受け取れるのは訴えた人、お詫びは会社しだい
判決の額は、原則として訴えた人にしか届きません。宇治市の判決も、約22万件の全員に1万5,000円を配るよう命じたものではありません。
訴えない人に届くのは、会社が自分で決めるお詫びです。
| サービス |
時期 |
お詫びの額 |
対象 |
| Yahoo! BB |
2004年 |
500円相当の金券など |
全会員 |
| ベネッセ |
2014年 |
500円の金券 |
流出した顧客 |
| タイムズカー |
2026年 |
3,000円相当の現金か金券 |
本人確認書類の画像が外部に送られた痕跡がある人 |
| お名前.comデスクトップクラウド |
2026年 |
見舞金5,000円 |
今の利用者全員 |
お名前.comは利用者の口座で実際に不正な取引があった件、タイムズカーは運転免許証などの画像に関わる件です。実害や情報の重さで額が上がる点は、判決と似ています。
みんなで訴える道も、まだ狭いのが現状です。個人情報保護委員会の2024年の資料によると、消費者団体が代わりに取り戻す制度は、漏えいの慰謝料については対象にならない場合が多いとされます。委員会のあっせんも、金銭賠償や謝罪を求めるものは条件から外れます。そもそも個人情報保護法に損害賠償の規定は無く、請求は民法などによります。
お金の話で狙われるのが、便乗の連絡です。skyticketは「返金・補償などを名目に」振込みや手数料の支払い、アプリのインストールを求める連絡に応じないよう求めました。届いたメールの送り主は、各社が案内する送信元の早見表で見比べられます。
実害が出たときにやること
情報が漏れたときに頼る先。実害が出ているかどうかで分かれる作成: 編集部 / 出典: 西のITメディア編集部
カードに身に覚えのない請求が出たら、カードの裏面の番号に連絡します。国民生活センターの研究誌によると、不正使用の損害は、カード会社への通知と警察への届け出を条件に、基本的にカード会社の負担ですが、通知から遡って61日以前の分は会員の負担とされます。番号がネットで盗まれた場合も同じ扱いです。細かい条件はカードごとの規約で確認できます。
ネットバンキングから不正に送金されたら、銀行と警察へ。全国銀行協会の2008年の申し合わせは、銀行に過失がなくても、本人の責任によらない被害は補償するとしています。
慰謝料まで求めたいときは、消費者ホットライン188か法テラス(0570-078374)で相談できます。60万円以下なら簡易裁判所の少額訴訟もあり、原則1回の審理で、最初の期日までに言い分と証拠をすべて出します。ここまでの判決の額を見ると、弁護士に頼んだ費用のほうが大きくなることもあるでしょう。
漏れたあとに何が起きるかは、情シスの相棒の相次ぐ情報漏えい、漏れたとなぜ分かる?漏れたら何が起きる?が詳しいです。
お金の話は後でええから、カードの明細と口座の入出金だけ、今夜のうちに見とこな。