11月に入ると、会社から年末調整の書類が配られる。今年はスマホのアプリで出してほしい、と案内が来た人もいるかもしれません。去年の控えを見ながら同じように書こうとすると、今年はつまずくところがあります。
2026年は、所得税の基礎控除と扶養の上限が変わる年です。従業員が申告書を作るための国税庁の「年調ソフト」には、10月に不具合も見つかりました。国税庁の発表と資料をもとに、よく出そうな問いに順に答えます。
今年の年末調整で変わること
Q. 何が変わるのですか。
大きく3つです。所得税の基礎控除が引き上げられました。給与所得控除の最低保障額は、65万円から74万円(2026年分と2027年分)になりました。配偶者や扶養親族の所得の上限は、合計所得58万円から62万円に上がりました。収入が給与だけなら、年収123万円から136万円です。
これらは2026年分の所得税から当てはまります。11月までに払われる給与から引く税は変わりません。12月の年末調整で、新しい基礎控除などを使って1年分の税額を計算し直します。
Q. 家族のパートの年収が、123万円を超えて136万円以下になりそうです。何をすればいいですか。
今回の改正で、新しく扶養親族などの対象になる家族です。国税庁は、扶養控除などを受けるには「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などを勤め先に出す必要があると案内しています。年の初めに出した申告書に、その家族を書いていなかった人は、出し直しが必要です。
配偶者の年収が136万円を超えても、207万円以下なら、配偶者特別控除の対象になります(本人の合計所得が1,000万円以下の場合)。住民税の側の変わり方は、家族を扶養に入れられる年収、136万円まで2026年分の所得税と来年度の住民税からにまとめています。
Q. 書類は去年と同じですか。
同じではありません。基礎控除と配偶者控除などをまとめて書く申告書(「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」)は、去年の分から変わっています。去年の控えを見て、そのまま写すのは避けたほうが安全です。
スマホやパソコンで出すとき
Q. 年調ソフトとは何ですか。
国税庁が無料で配っている、従業員が控除の申告書を作るためのソフトです。スマホは、App StoreやGoogle Playで「年末調整 国税庁」と検索して入れます。パソコン向けもあります。2026年分の正式版は、10月1日に公開されました。
控除の額は自動で計算され、申告書をデータでも紙でも出せます。ただ、年調ソフトは、勤め先が行う1年分の税額の計算まではしません。データで出せるかどうか、どう渡すかは勤め先によって違うので、会社の案内に従います。紙で出しても問題はありません。
Q. 年調ソフトの不具合とは何ですか。
国税庁は10月22日、2つの不具合を知らせました。
まず、家族の所得を入力できない不具合です。次の3つがそろったときに起きます。家族などが23歳未満であること。その家族を「他の所得者の控除対象」とすること。その家族の2026年分の所得の見積額が62万円を超えること。このとき、扶養控除等申告書の画面で家族の合計所得を入力できず、0円として扱われます。その結果、生命保険料控除や所得金額調整控除の額が、本来より多く計算されることがあります。
国税庁は、家族が「特定親族」に当たる場合などを例に挙げています。19歳から22歳の子どもが、アルバイトで年に136万円を超えて稼いでいる家庭などです。直した版は、11月中旬ごろに出す予定です。
もう一つは、Androidのスマホで「書面出力」を選ぶと、画面が真っ暗になり、作った申告書のPDFを見られない不具合です。直した版が出るまでは、出力の形式で「電子データで出力する」を選び、メールのアプリに渡されたPDFを保存してから開くよう案内しています。
国税庁の「令和8年分年調ソフトに関する事象について」(10月22日)の1ページ目出典: 出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/pdf/0026010-098-01.pdf)(公共データ利用規約(第1.0版)に準拠した国税庁ホームページの利用条件による(2026年10月29日確認))
マイナポータル連携で、証明書を取り込む
Q. マイナポータル連携を使うと、何が楽になりますか。
保険会社などが出す控除証明書のデータを一度に取り込み、申告書に自動で入力できます。対象は、生命保険料、地震保険料、国民年金保険料、国民年金基金の掛金、iDeCoと小規模企業共済の掛金、住宅ローンの年末残高などの証明書です。ただし、保険会社や銀行がマイナポータル連携に対応している必要があります。取り込める時期も、証明書を出す会社によって違います。
マイナポータル連携で取り込める控除証明書(国税庁のページ)出典: 出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/mnp_junbi/nenmatsu.htm)(公共データ利用規約(第1.0版)に準拠した国税庁ホームページの利用条件による(2026年10月29日確認))
Q. 何を準備すればいいですか。
マイナンバーカードと、2つのパスワード(数字4桁と、英数字6〜16文字)を用意します。カードを読み取れるスマホか、ICカードリーダーも要ります。マイナポータルの「年末調整の事前準備」のページの案内に沿って進めると、準備が終わります。
国民年金保険料の証明書のデータを受け取るには、その年の10月中旬までに、マイナポータルからねんきんネットを使っておく必要がありました。間に合わなかった人は、ねんきんネットで再交付を申し込めます。家族の分の証明書を取り込むには、マイナポータルで代理人の登録をします。登録には、本人と家族の両方のマイナンバーカードが要ります。
11月の書類が来たらやること
- 家族の2026年の収入の見込みを出し、新しく扶養の対象になる人がいないか確認する
- 23歳未満の家族を「他の所得者の控除対象」にしていて、その家族の所得が62万円を超えそうなら、年調ソフトの直した版を待つか、紙の申告書で出す
- 勤め先が、データで受け付けるのか、紙で受け付けるのかを確認する
- マイナポータル連携を使うなら、保険会社などが対応しているかを確認し、事前準備を済ませておく
年調ソフトの使い方がわからないときは、国税庁の年末調整手続の電子化及び年調ソフトヘルプデスク(0570-02-4563)に電話できます。12月28日までは、毎日9時から17時まで受け付けています。
e-Taxの新しい機能については、e-Taxで開業の届出がまとめて出せるように 個人事業者向け、2027年1月からでも取り上げています。
大阪の会社でも京都の会社でも、11月の書類は去年の控えを写す前に、今年の変わったところを一回見とこな。