大阪市に本社を置く住友電気工業(住友電工)が、2026年10月19日、英国スコットランドで海底ケーブル工場の開所式を開きました。電線の会社として知られる住友電工は、いま何で稼いでいるのでしょうか。2026年3月期の決算と有価証券報告書(有報)の数字から、5つの事業と関西の拠点を図で整理します。
英国に海底ケーブル工場 何をつくる?
住友電工の発表によると、工場は英国スコットランド・ハイランド地方のニグ港にあり、投資の総額は3億5千万ポンド(約700億円)です。2023年4月に設立を発表し、2024年5月に建設を始めました。英国で初めての、高圧直流(HVDC)海底ケーブルの製造拠点です。
HVDC海底ケーブルは、洋上風力などでつくった電気を、海底を通して遠くの需要地へ送るためのケーブルです。工場では525kVのHVDC XLPE(架橋ポリエチレン)絶縁海底ケーブルをつくります。敷地は約15ヘクタール、製造スペースは約58,000平方メートルです。
全面稼働のあとは200人以上を直接雇い、ケーブルの敷設などを通じて400人規模の雇用を見込んでいます。発表に載ったスコットランド首相のコメントによると、スコットランド政府はこの計画に2,450万ポンドの補助金を出しました。
5つの事業 売上の半分以上は自動車
2026年3月期(2025年度)の連結売上高は5,110,171百万円で、前の期より9.2%増えました。営業利益は418,173百万円で30.4%増え、過去最高です。売上高のうち海外の割合は62.8%でした。
住友電工の5つの事業の売上高・営業利益と、伸びた理由(2026年3月期)作成: 編集部 / もとの資料: 住友電気工業 決算短信・Fact Book・有価証券報告書
事業ごとの数字は次のとおりです(単位は百万円)。営業利益率は、売上高と営業利益から編集部が計算した値です。
| 事業 |
売上高 |
営業利益 |
営業利益率(編集部の計算) |
| 自動車 |
2,937,168 |
179,700 |
6.1% |
| 環境エネルギー |
1,178,780 |
90,615 |
7.7% |
| エレクトロニクス |
409,096 |
39,528 |
9.7% |
| 産業素材他 |
388,413 |
31,399 |
8.1% |
| 情報通信 |
326,632 |
77,435 |
23.7% |
自動車の事業の中心は、車の中で電気や信号を運ぶ電線の束「ワイヤーハーネス」です。グループの従業員302,972人のうち244,192人が、自動車の事業で働いています。
いちばん伸びたのはデータセンター向けの光の製品
この1年で売上高がいちばん伸びたのは情報通信で、46.3%増えました。決算短信によると、生成AI市場の拡大を背景に、データセンター向けの光配線製品、光ケーブル、光デバイスの需要が増えたためです。
会社の2026年度の予想では、情報通信の売上高は500,000百万円、営業利益は130,000百万円です。有報には、横浜製作所に新しい研究開発棟が完成して稼働する予定で、データセンター向けの光コネクタなどの開発を急ぐと書かれています。予想は会社の見通しで、決まった数字ではありません。
電線・ケーブルの事業と海底ケーブル
英国の工場は「環境エネルギー関連事業」に入ります。2025年度のこの事業の売上高のうち、いちばん大きいのは送配電用電線・ケーブル・機器・工事の338.5十億円です。巻線は194.2十億円、日新電機は174.1十億円でした。
有報の今後の取り組みでは、電力ケーブルで国内の設備の更新の需要をとらえるとともに、国や地域をつなぐ連系線や再生可能エネルギーの受注に努め、欧州での新拠点の立ち上げに力を入れるとしています。
なお、電気工事の住友電設は、株式を売って2026年3月期に連結から外れました。この株式の売却による特別利益もあり、親会社株主に帰属する当期純利益は369,508百万円と、前の期より90.7%増えました。
大阪・関西の拠点 研究の中心は大阪製作所
有報の「主要な設備の状況」(2026年3月31日現在)には、関西の拠点が並んでいます。
環境エネルギー事業の内訳、英国の海底ケーブル工場、関西の主な拠点作成: 編集部 / もとの資料: 住友電気工業 ニュースリリース・Fact Book・有価証券報告書
| 拠点 |
所在地 |
主な中身 |
従業員 |
| 大阪製作所 |
大阪市此花区 |
研究本館「WinD Lab.」、導電製品等の製造設備 |
2,037人 |
| 伊丹製作所 |
兵庫県伊丹市 |
「Crystal Lab.」、特殊金属線等の製造設備 |
998人 |
| 日新電機 |
京都市右京区 他 |
受変電・調相設備、制御システム等の生産設備 |
1,986人 |
| 住友電工ハードメタル |
兵庫県伊丹市 他 |
超硬工具等の製造設備 |
628人 |
| 住友電工ウインテック |
滋賀県甲賀市 他 |
巻線の製造設備 |
481人 |
有報は、大阪製作所の研究本館「WinD Lab.」を研究開発の中核とし、伊丹製作所の「Crystal Lab.」、横浜製作所の情報通信の研究拠点と連携していると説明しています。2025年度の研究開発費は162,858百万円で、売上高の3.2%でした。
数字を読むときの注意
- セグメントの売上高は、事業どうしの取引を含みます。5つを足すと連結の売上高より大きくなります。
- 営業利益率は編集部の計算で、会社が発表した値ではありません。
- 有報の従業員の平均は、住友電工そのもの(提出会社)の7,209人の数字です。平均年齢43.2歳、平均勤続年数18.0年、平均年間給与8,960,000円で、子会社で働く人は含みません。
- この記事は数字の読み方の整理で、株の売り買いを勧めるものではありません。
今日からできること
- 就職先として気になる会社は、有報の「従業員の状況」と「主要な設備の状況」を見る: どこで何人が働き、何をつくっているかが分かります。
- 決算短信の「セグメント」の説明を読む: 売上が増えた理由が、会社の言葉で短く書かれています。
- 会社のIR資料室でFact Bookを見る: 事業ごとの売上高や研究開発費が、年度ごとに表になっています。
関西で働く人や学生にとって、地元に本社や研究拠点がある会社の数字は、仕事や進路を考える材料になります。住友電工の資料は、会社のIR資料室から誰でも読めます。
身近な会社の稼ぎ方、たまには数字で見てみてな。