給与の振込やローン、スマホのアプリで、地元の銀行は毎日のように使う会社です。関西2府4県に本店がある上場の銀行と銀行持株会社の5社を、有価証券報告書(有報)の数字で並べました。平均年間給与などの待遇に加え、システムへの投資やDX、サイバー攻撃とシステム障害のリスクが有報にどう書かれているかを、図解で整理します。
関西2府4県に本店がある上場の銀行5社
対象は、日本取引所グループの東証上場銘柄一覧(2026年9月末)で業種が「銀行業」の会社のうち、EDINETコードリストの所在地で本店が大阪・京都・兵庫・滋賀・奈良・和歌山にある5社です(2026年10月19日確認)。滋賀銀行、京都フィナンシャルグループ(京都FG)、池田泉州ホールディングス(池田泉州HD)、南都銀行、紀陽銀行で、兵庫県に本店がある会社はこの一覧にありませんでした。
三重県に本店がある銀行は、2府4県の外として入れていません。りそなホールディングスは、一覧の所在地が東京都江東区のため入れていません。並びは本店の府県の順(都道府県コードの順)で、会社の順位ではありません。
5社の有報は、いずれも2026年3月期のもので、金融庁のEDINETで公開されています。
| 会社 |
本店 |
提出会社の種類 |
従業員数(連結・人) |
提出会社の従業員数(人) |
平均年間給与(万円) |
平均年齢(歳) |
平均勤続年数(年) |
有報 |
| 滋賀銀行 |
大津市 |
銀行 |
2,243 |
1,936 |
732.0 |
37.66 |
14.66 |
有報 |
| 京都フィナンシャルグループ |
京都市 |
銀行持株会社 |
3,676 |
271 |
841.5 |
42.9 |
16.7 |
有報 |
| 池田泉州ホールディングス |
大阪市 |
銀行持株会社 |
2,244 |
16 |
841.1 |
42.9 |
11.8 |
有報 |
| 南都銀行 |
奈良市 |
銀行 |
2,352 |
2,169 |
721.5 |
39.1 |
16.5 |
有報 |
| 紀陽銀行 |
和歌山市 |
銀行 |
2,473 |
2,125 |
604.8 |
37.66 |
14.41 |
有報 |
従業員数(連結)は、子会社を含むグループ全体の人数です。平均年間給与・平均年齢・平均勤続年数は、提出会社(有報を出した会社そのもの)の数字です。平均年間給与は、有報の千円単位の数字を万円に直しました(四捨五入はしていません)。平均年齢と平均勤続年数は、有報の表記のままです。
銀行ごとの平均年間給与・年齢・勤続年数
就職や転職で知りたいのは、銀行で働く人の数字です。京都FGと池田泉州HDは銀行持株会社なので、上の表の平均は銀行の行員全体の数字ではありません。2社の有報には、中核の銀行の欄があります。銀行そのものの数字で5行をそろえると、次のとおりです。
関西の地方銀行5行の平均年間給与・年齢・勤続年数と、持株会社の数字・グループの従業員数作成: 編集部 / もとの資料: 各社の有価証券報告書(EDINET・金融庁)
| 銀行 |
本店 |
従業員数(人) |
平均年間給与(万円) |
平均年齢(歳) |
平均勤続年数(年) |
載っている欄 |
| 滋賀銀行 |
大津市 |
1,936 |
732.0 |
37.66 |
14.66 |
滋賀銀行の有報(提出会社) |
| 京都銀行 |
京都市 |
3,314 |
711.5 |
39.1 |
14.3 |
京都FGの有報(最大人員会社の状況) |
| 池田泉州銀行 |
大阪市 |
1,873 |
715.7 |
38.2 |
14.8 |
池田泉州HDの有報(主要な子会社) |
| 南都銀行 |
奈良市 |
2,169 |
721.5 |
39.1 |
16.5 |
南都銀行の有報(提出会社) |
| 紀陽銀行 |
和歌山市 |
2,125 |
604.8 |
37.66 |
14.41 |
紀陽銀行の有報(提出会社) |
京都銀行と池田泉州銀行の本店は、それぞれの持株会社の有報の「関係会社の状況」の住所によります。
持株会社の平均は、少人数の数字
京都FGの提出会社の従業員は271人で、京都銀行との兼務者270人を含みます。平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与も、兼務者を含めた数値と書かれています。京都FGの有報には、銀行持株会社として子銀行の京都銀行と同じ給与体系にしている、とも書かれています。
池田泉州HDの提出会社の従業員は16人で、全員が池田泉州銀行からの出向者です。平均勤続年数は出向元での勤務年数を通算しています。このほかに、池田泉州銀行との兼務者161人が従事していると書かれています。
持株会社の平均は、銀行で働く人全体の平均ではありません。同じ有報の銀行の欄では、京都銀行が711.5万円、池田泉州銀行が715.7万円でした。
数える人の範囲は、注記で確かめる
5行とも、嘱託や臨時の従業員は従業員数に含みません。そのほかの扱いは、銀行ごとに注記があります。
- 滋賀銀行: 従業員数は、出向者を除いた就業人員です。
- 池田泉州銀行: 執行役員18人を含みません。
- 南都銀行: 執行役員を含む就業人員で、出向者128人を含みません。
- 紀陽銀行: 執行役員9人と出向者106人を含みません。
平均年間給与は、7つの欄とも賞与と基準外賃金を含むと書かれています。5行の平均年齢は37.66歳から39.1歳、平均勤続年数は14.3年から16.5年でした。
有報に書かれたシステム投資とDX
DXは、デジタル技術で仕事やサービスのやり方を変えることです。5社の有報には、いずれもデジタルやDXの記述があります。金額で書く会社、人数や件数の目標で書く会社と、書き方が違います。
5社の有価証券報告書で、システム投資とDXがどの項目にどう書かれているかの整理作成: 編集部 / もとの資料: 各社の有価証券報告書(EDINET・金融庁)
- 滋賀銀行: 「設備の新設、除却等の計画」に、勘定系システム(預金や貸出などを扱う中心のシステム)の更改があります。投資予定の総額は6,139百万円、既支払額は3,445百万円で、2024年6月着手、2027年1月完了予定です。中期経営計画の達成指標では「DXへの取り組み」を定性評価とし、2026年3月期の実績にAI研修の全行実施や、産学金連携による無人店舗設置を挙げています。
- 京都FG: 2026年4月に公表した中期経営計画(2026〜2028年度)のKPIに、IT・DX投資150億円以上(中計期間累計)と、人的資本投資70億円以上を挙げています。人財戦略では、京都銀行の拠点戦略や店頭業務体制の見直し、DX推進による効率化等で生み出した人員で、380名を重点領域へ配置転換する方針です。社外役員の状況の欄には、京都銀行がNTTデータにシステム運営を委託していると書かれています。
- 池田泉州HD: 6つのマテリアリティ(重要課題)の1つに「DXによる生産性向上とサービス高度化」を挙げています。第6次中期経営計画(2026〜2028年度)では、デジタル戦略の推進として、顧客接点強化・利便性向上と生成AIの活用を掲げています。人材の指標は、デジタルコア人材が2025年度119名(2028年度目標130名)、デジタルベース人材が136名(同311名)です。池田泉州銀行の事務機器等の更改には、5,909百万円の投資を予定しています。
- 南都銀行: マテリアリティの主な取組に、非対面チャネルの充実、行内業務のデジタル化、データ利活用の強化を挙げています。事業等のリスクには、金融取引のデジタル化には、優秀なデジタル人材の確保と膨大なシステム開発コスト等の負担が必要と書いています。沿革には、2008年5月に地銀共同化システムが稼動したとあります。
- 紀陽銀行: 第7次中期経営計画の主要戦略に「デジタルバンキング戦略:地域DXの推進」を挙げ、グループ会社の紀陽情報システムと協業するとしています。DX戦略委員会は頭取が委員長で、原則3か月ごとに開き、大規模システム案件の決定などを行います。ITパスポートの取得者数は2025年度1,146人で、2026年度の計画は1,500人以上です。
金額は、有報に書かれた単位(百万円・億円)のままにしました。南都銀行の6,888百万円は、店舗関連設備も含む銀行業務の設備投資の額です。投資の中身と範囲は会社ごとに違うため、金額の大小では比べられません。
システム障害とサイバー攻撃のリスクの書き方
5社とも、有報の「事業等のリスク」に、システムの障害、サイバー攻撃、情報の漏洩、自然災害を書いています。違うのは、項目の立て方と、体制をどこまで書くかです。
5社の有価証券報告書で、システム障害とサイバー攻撃のリスクがどう書かれているかの整理作成: 編集部 / もとの資料: 各社の有価証券報告書(EDINET・金融庁)
- 滋賀銀行: 2025年12月の取締役会で選んだトップリスクに、「大規模システム障害、サイバー攻撃の脅威」と「次期システムへの移行」が入っています。サイバーリスクの項目では、当行だけでなく外部委託先・提携先への攻撃で、金融サービスの中断や情報漏洩が起きるおそれを書いています。
- 京都FG: 「情報セキュリティリスク」の中に、情報リスクとシステムリスクを並べています。コンピュータセンターの被災に備えたバックアップセンターの整備や、継続的なサイバーセキュリティ対策を挙げています。
- 池田泉州HD: 「特に重要な影響を及ぼすリスク」の6つに、情報資産(システム)リスクとサイバー攻撃等に関するリスクが入っています。CSIRT(コンピュータの事故に対応する専門チーム)を置き、池田泉州銀行は2023年度に、NTTデータが基幹系システムを運営する地銀共同センターとMEJARの参加行でつくる「CMS-CSIRT」を共同設立しました。インターネットバンキングでは、不正アクセスを早く見つけるシステムと、接続するときの通信の暗号化を書いています。
- 南都銀行: システムリスクの項目で、不正侵入や情報の窃取・改ざん・破壊などのサイバー攻撃を説明し、「南都銀行CSIRT」が中心となってサイバー攻撃演習などを行うと書いています。デジタル化の進展で、長期間のサービス停止が起きるおそれにも触れています。
- 紀陽銀行: 事業等のリスクのシステムリスクは、停止・誤作動・不正使用・外部からのサイバー攻撃等を短い1文で書いています。マテリアリティ「オペレーショナル・レジリエンスの確保」では、リスクに情報流出(サイバー攻撃等)による信用の失墜を挙げ、2025年度の実績に「ペネトレーションテスト」(擬似的な攻撃で弱点を点検すること)の実施を載せています。
書いてある量で、守りの強さは分かりません。有報に載せる項目は会社が選んでいるため、書いていないことは、取り組みがないという意味でもありません。
大阪・関西で地元の銀行のアプリを使う人が見るところ
有報は年に1回の書類で、今起きている障害やメンテナンスの予定は載っていません。アプリやネットバンキングが使えないときは、各行の公式サイトのお知らせで確かめます。銀行の名前で届いたメールやSMSのリンクから開かず、自分で公式サイトやアプリを開くと、偽のページに入るおそれを減らせます。
有報のリスクの欄には、詐欺の手口も出てきます。滋賀銀行はフィッシング詐欺や特殊詐欺に加えてSNS型投資・ロマンス詐欺を、南都銀行は振り込め詐欺・サイバー犯罪に加えてSNS型投資詐欺やロマンス詐欺を、金融犯罪のリスクとして書いています。池田泉州HDの有報には、池田泉州銀行のホームページで金融犯罪の注意喚起の情報を発信していると書かれています。
関西の詐欺の件数は関西2府4県の特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺 警察の統計を図解、銀行の不正送金対策は銀行の不正送金対策、乱数表がまだ2割 金融庁の調査で分かった自分で確かめることで整理しています。
就職・転職で有報を自分で確かめる手順
- EDINETの「書類簡易検索」に会社名を入れ、有価証券報告書を開きます。
- 「従業員の状況」で、連結の従業員数と提出会社の平均を見ます。持株会社は、「最大人員会社の状況」や「主要な子会社」の欄で銀行の数字を探します。
- 注記で、出向者・執行役員・嘱託や臨時の人を含むかを確かめます。
- DXやシステムへの投資は、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「サステナビリティに関する考え方及び取組」「設備の新設、除却等の計画」で探します。
- システム障害やサイバー攻撃は、「事業等のリスク」と「コーポレート・ガバナンスの状況等」を読みます。
本店の場所と勤務地は、同じとは限りません。勤務地や職種、初任給は、各行の募集要項で確かめます。鉄道・電力・ガスの会社を同じ見方で並べた関西の鉄道・電力・ガス6社を図解 有価証券報告書で見る社員数・平均年収・DXの書き方もあります。
この記事は、銀行の良し悪しや投資の判断を示すものではありません。毎日使う地元の銀行も、有報を開いたら備えの書き方がそれぞれやって分かるで。気になるとこは、原本で確かめてみてな。