警察庁は10月15日、マイクロソフトや一般財団法人日本サイバー犯罪対策センター(JC3)と組んで、日本を狙うフィッシングに使われていた犯罪の仕組みを突き止め、停止(テイクダウン)させたと発表しました。マイクロソフトなどが米国で起こした民事の訴えに対し、10月8日に裁判所の命令が出たことによるものです。和歌山県警も10月、偽メールへの注意を呼びかけるチラシを出しています。
警察庁の広報資料「マイクロソフト・JC3と連携した犯罪インフラのテイクダウンについて」出典: 警察庁(政府標準利用規約(第2.0版)準拠(警察庁)。出典「マイクロソフト・JC3と連携した犯罪インフラのテイクダウンについて」(警察庁)のPDFを編集部が画像にして余白を切り抜き・確認 2026-10-23)
何が止まった? 偽サイトのキットと不正アカウントの売り場
警察庁によると、2025年10月から、関東管区警察局のサイバー特別捜査部とマイクロソフト、JC3が、日本を狙うフィッシングの実態を調べてきました。その結果、犯罪の仕組みを突き止め、マイクロソフトなどが10月6日に米国の裁判所に訴えを起こしました。8日に裁判所の命令が出て、それにもとづいて停止させました。
マイクロソフトの10月14日の発表によると、止めたのは次の3つのサービスです。
- YAM Store: マイクロソフトやGoogleの不正なアカウントや、詐欺に使う道具を売るネットの店。期限が切れた団体のドメインを手に入れ、活動しているように見せかけてアカウントを作っていた例もあった
- CoGUI: 会社や金融機関、役所などになりすましたサイトとメッセージを、すぐに使える形で犯罪者に渡すキット。特に日本と米国の人を狙っていた。日本語の利用者からログインと支払いの情報を盗むための、ネット通販の偽サイトの例も示している
- Iron Man: 2026年半ばからCoGUIに代わって使われ始めたキット。銀行、小売り、医療機関、交通の機関、警察、役所などになりすます2300を超えるひな形があった
マイクロソフトによると、3つのサービスは2026年1月から、世界で10億件を超える悪意のあるメッセージを送るのに使われ、150を超える国の7万5000を超える組織が狙われました。運営者は数千万ドルを得ていたとしています。
米国のフロリダ州南部地区の連邦地方裁判所の命令にもとづき、マイクロソフトと医療分野の非営利団体Health-ISACが、仕組みを支えるドメインを差し押さえて行き先を切り替えました。マイクロソフトは、YAM Storeに関わる2万を超えるアカウントを使えなくし、なりすましや詐欺に使われた10万を超えるドメインを遮断しているとしています。
始まりは日本を狙う偽メールの捜査
マイクロソフトは、2025年後半に警察庁から日本の人を狙う偽メッセージの連絡を受けたことが、捜査の始まりだったとしています。最初は個別の詐欺だと思っていたのが、たどっていくと、アカウントや偽サイトの道具を売る中国語の犯罪の市場に行き着いたと説明しています。JC3は、130を超える会員の組織から集めた情報で、日本の会社や金融機関を狙う被害の広がりを示したとしています。
警察庁とマイクロソフトは、インドの当局と合同で行ったサポート詐欺の捜査(2025年5月に検挙)をきっかけに連携を深め、2026年9月には日本マイクロソフトと連携の協定を結んでいました。
JC3によると、警察庁の統計で、インターネットバンキングの不正送金の被害額は、2023年が87.3億円、2024年が86.9億円、2025年が104億円でした。2025年に法人の被害が急に増えた背景には、電話を使ったボイスフィッシングの被害が増えたことがあるとしています。
暮らしと仕事への影響
偽メールや偽SMSを作る道具が手に入りにくくなれば、犯罪者が手軽に偽サイトを用意することは難しくなります。ただ、マイクロソフトは、今回止めた3つは大きな犯罪の網の一部にすぎないとしています。宅配の不在、未払いの料金、口座の確認などをかたる偽メッセージは、これからも届くと考えておく必要があります。
マイクロソフトは、Iron Manのひな形に名前が使われていたことは、その組織のシステムが破られたことを意味しないとしています。偽メールの差出人に本物の会社の名前があっても、その会社から情報が漏れたとは限りません。
今日からできること
警察庁と和歌山県警は、利用者と事業者それぞれに、次の対策を呼びかけています。
- メールやSMSのリンクを安易に押さない: 差出人のアドレスは偽れます。公式のアプリやブックマークから自分で開いて確かめます。
- IDとパスワードを使い回さない: 一つが漏れると、ほかのサービスまで乗っ取られます。
- パスキーなどの多要素認証を使う: パスワードだけのログインをやめ、スマホの認証などを組み合わせます。
- 会社のメールにはDMARCを入れる: 事業者は、送信ドメイン認証のDMARCを導入して「受信拒否」に設定し、自社の名前をかたる偽メールが届きにくくします。
大阪・関西では
和歌山県警察本部のサイバー犯罪対策課は、10月版の「サイバーセキュリティニュース」で、フィッシングメールへの注意を呼びかけました。漏れたメールアドレスに偽メールが届き、さらなる情報の流出やお金の被害につながるおそれがあるとしています。チラシの終わりには、今回の警察庁のテイクダウンも紹介しています。
和歌山県警察本部サイバー犯罪対策課の「フィッシングメールに注意!」(R8.10)出典: 和歌山県警察本部サイバー犯罪対策課・警察庁(引用)
和歌山県警は、DMARCとパスキーについて、それぞれ別のチラシも出しています。県警のサイトから読めます。和歌山県警のこれまでの呼びかけは、和歌山県警が紹介 2026年上半期のサイバー脅威 ランサムウェアとネット詐欺にもまとめています。
たとえば、和歌山や大阪で小さな会社を営み、取引先とメールでやり取りしている人なら、自社の名前をかたる偽メールが取引先に届かないよう、使っているメールの会社にDMARCの設定ができるかを聞いておくと安心です。
偽メールのリンクは押さんと、公式のアプリから確かめよな。