字幕のボタンを押したのに、チャンネルを変えたら文字が消えた。
関西のテレビで、そんな経験はありませんか。局によって、字幕の付く時間が大きく違うからです。総務省が10月30日に公表した2025年度の実績では、放送時間全体に占める字幕の割合に、関西の局どうしで8倍近い開きがありました。
発表の本文に並ぶのは、全国の区分ごとの平均です。局ごとの別表から関西の10局を抜き出すと、平均では見えない違いが出てきます。
放送時間全体に占める字幕の割合右の小さい数字は対象番組の字幕の割合
- MBS75.6%100.0%
- 関西テレビ74.2%100.0%
- 朝日放送テレビ72.4%100.0%
- 読売テレビ70.5%100.0%
- テレビ大阪62.3%97.1%
- びわ湖放送26.6%57.7%
- 奈良テレビ23.8%42.0%
- テレビ和歌山23.0%44.4%
- サンテレビ13.2%61.1%
- KBS京都9.5%21.6%
出典は総務省の別表1。KBS京都の正式名は京都放送で、NHK大阪放送局の個別の数字は別表にありません。
在阪4局の伸びは、ほぼMBSの分
在阪の準キー4局の平均は73.2%でした。前の年度から4.0ポイント伸びて、在京キー5局の71.7%を上回りました。
でも、4局がそろって伸びたわけではありません。関西テレビは0.5ポイント、読売テレビは0.8ポイントの増加で、朝日放送テレビは2.0ポイント減りました。MBSだけが59.1%から75.6%へ、16.5ポイントも上がったのです。字幕の付いた時間は約5,157時間から約6,606時間に増えた計算で、1日あたり約4時間の上積みになります。
総務省の資料に、伸びた理由は書かれていません。手がかりは、MBSが2022年12月に総務省の研究会へ出した資料です。2021年度のMBSは54.4%で、在阪4局の平均は67.3%でした。この資料でMBSは、深夜ドラマやアニメなど目標の対象外の番組にも字幕を付け、生放送の情報番組やスポーツ中継でも字幕を強める方針を示しました。
AIの話も出てきます。音声から字幕を自動で作るシステムをローカルニュース枠に入れたものの、オペレーター2人が確認して送り出す形でした。当時はAIだけでは「正しい字幕を出す」という放送局の責任を果たせないと判断した、という一文に、現場の慎重さがにじみます。今回の伸びにAIがどこまで効いたかは、公表資料からは分かりません。
「100%」は全番組という意味ではない
在阪4局の対象番組の字幕は、そろって100.0%です。それでも放送時間全体で70%台にとどまる理由は、対象の決め方にあります。
総務省の指針の対象は、6時から25時までのうち連続した18時間の番組です。調査は6月と12月の2週間を抜き出します。複数の人が同時に話す生放送、外国語の番組、大部分が器楽演奏の音楽番組、権利処理の都合で字幕を付けられない番組は除かれます。
この分母が、局によって大きく違います。
サンテレビの対象番組の字幕は61.1%で、関西の独立局5局ではいちばん高い数字でした。ところが対象の時間は74時間43分で、関西テレビの226時間50分の3分の1以下。放送時間全体で見ると13.2%に下がります。除外した番組の内訳は別表に無く、分母が小さい理由は分かりません。
2週間の抜き出しなので、年ごとのぶれも大きくなります。奈良テレビは56.3%から42.0%に下がり、テレビ大阪は88.2%から97.1%に上がりました。1年の上下だけで局を評価しないほうがよいでしょう。
総務省の別表1のうち、関西の県域の6局の字幕放送の実績出典: 出典:総務省ホームページ(https://www.soumu.go.jp/main_content/001098747.pdf)(公共データ利用規約(第1.0版)に準拠した総務省の公表資料の一部を切り抜いて掲載(2026年11月2日確認))
県域局の目標は80%、独立局は「できる限り」
テレビ大阪のような県域の局には、2027年度までに対象番組の80%以上という目標があります。一方、サンテレビやKBS京都のような独立局は「できる限り多くの番組に字幕付与」とされ、数字の目標はありません。
全国の独立13局の平均は43.1%で、前の年度より3.2ポイント下がりました。KBS京都の21.6%は、別表の局の中でいちばん低い数字です。
壁は費用と人でしょう。在京と在阪の局を除くと、総務省の助成は追加費用の2分の1が上限で、残りは局の負担になります。NHKも2022年に大阪放送局で、近畿のニュースにAIの自動字幕を付ける試験をした際、地域の局では設備とオペレーターの確保が課題だと説明しました。指針も生成AIへの期待に触れつつ、ポテンシャルとリスクの両面があるとしています。
AIで字幕の費用が下がれば、恩恵が大きいのは小さな局でしょう。ただ、誤字を誰が確認するかという問いは、局が小さいほど重くなります。
KBS京都の手話は民放で全国最長
字幕だけで局を測ると、見誤ります。
KBS京都の手話放送は週3時間3分でした。全国でNHK教育の4時間44分に次ぐ長さで、NHK総合の1時間21分を上回り、民放ではいちばん長い時間です。逆に、字幕の時間が長い在阪4局の手話は週14〜31分でした。
| 局 |
解説番組の割合 |
手話の週あたりの時間 |
| MBS |
25.8% |
29分 |
| 読売テレビ |
21.3% |
14分 |
| 朝日放送テレビ |
21.1% |
18分 |
| 関西テレビ |
19.4% |
31分 |
| テレビ大阪 |
9.8% |
6分 |
| テレビ和歌山 |
6.8% |
1時間11分 |
| 奈良テレビ |
2.8% |
1時間8分 |
| びわ湖放送 |
1.4% |
4分 |
| KBS京都 |
1.2% |
3時間3分 |
| サンテレビ |
0.0% |
48分 |
解説放送は、場面の様子を声で伝える放送です。サンテレビの対象番組の解説は0時間で、ほかに同じ局は千葉テレビと三重テレビだけでした。字幕、解説、手話のどれに力を入れるかは、局によってまったく違います。
家族とテレビを見るときにできること
耳が遠くなった親がいる家なら、次の3つが役に立ちます。
- 番組表やテレビの表示で「字」のマークを探し、リモコンの「字幕」ボタンを押す。全日本ろうあ連盟によると、市販のほとんどのテレビとレコーダーでワンタッチで切り替えられます。
- 実家のテレビで字幕が出るかを、帰省したときに一緒に試す。
- 災害のときに見る局を、ふだんから決めておく。指針は大規模災害のとき、時間帯にかかわらず、できる限り速やかに字幕で対応するとしました。
ふだん見る地元の局の字幕が少ないと感じたら、視聴者窓口に声を届ける手もあります。指針も、利用者を含む幅広い意見を踏まえて進めるとしました。
テレビの音量で揉める前に、字幕のボタンを一回押してみたらええやん。