画面の右上には「5G」。それなのに、動画は読み込みの輪を回したままです。
表示は間違っていません。その5Gが、4Gと同じ周波数帯の電波なのかもしれないのです。ドコモはサービスエリアマップで、700MHz帯などの5Gエリアに「5Gの通信速度は、4G(LTE)同等となります」と注記しています。ソフトバンクのマップでも、5G(NR化)の凡例に「通信速度は4G同等」とあります。NR化とは、4Gの周波数を5Gに転用すること。
幅の広い電波を使う5Gは、サブ6とミリ波です。サブ6は、5G用に割り当てられた3.7GHz帯や4.5GHz帯の電波を指します。総務省が10月30日に公表した整備状況に、7月公表の都道府県別の数字と、同じ日の電波の利用状況調査を重ねると、関西の府県と携帯4社の差が数字で分かります。
5Gの広さと、サブ6の広さは別の数字
5G人口カバー率は、5Gが届く場所に住む人の割合です。全国98.6%という総務省の数字は4社のエリアを重ねたもので、契約している1社の数字ではありません。会社ごとに分けると、差がはっきりします。
| 会社 |
5G人口カバー率 |
うちサブ6 |
5G基地局に占めるサブ6 |
5G通信量に占めるサブ6 |
| ソフトバンク |
97.4% |
53.5% |
11.6% |
23.1% |
| KDDI |
96.0% |
56.1% |
35.9% |
66.3% |
| NTTドコモ |
91.5% |
70.4% |
62.9% |
84.4% |
| 楽天モバイル |
65.4% |
65.4% |
57.2% |
99.9% |
5Gが広い会社ほど、サブ6で運ぶ割合は小さくなります。右の2列は、総務省の基地局数と月間通信量から割り出しました。裏返すと、4Gと同じ周波数帯が運ぶ5Gの通信量は、ソフトバンクで76.8%、KDDIで33.6%、ドコモで15.6%。楽天モバイルはほぼ全量がサブ6ですが、届く範囲は65.4%にとどまります。
携帯4社の5Gの広さと、サブ6が基地局と通信量に占める割合作成: 編集部 / 出典: 西のITメディア編集部
違うのは会社の良し悪しより、広げ方の順番でしょう。KDDIとソフトバンクの方針は、4Gから転用した周波数で全国に5Gを広げ、人が集まる場所にサブ6とミリ波を足す形です。楽天モバイルの5G基地局は、サブ6とミリ波だけ。
中身の違いは、電波の幅に表れます。総務省の割当表を見ると、700MHz帯は大手3社とも20MHz、3.5GHz帯は40MHz。サブ6は1つの帯で100MHzあり、KDDIとドコモは2つの帯を持ちます。幅は道路の車線のようなもので、広いほど一度に多くのデータを運べるわけです。
ただ、サブ6の電波は半径数百メートルほどしか届きません。基地局を細かく置く必要があり、地域の差はここに出ます。
滋賀と和歌山で順位が入れ替わる
関西6府県で比べると、2つの数字は同じ順番になりません。5G人口カバー率で大阪に次ぐ滋賀が、サブ6展開率では最下位。5Gがいちばん低い和歌山は、サブ6では大阪に次ぐ2位に入ります。
| 府県 |
5G人口カバー率 |
サブ6展開率 |
前年差 |
| 大阪 |
99.9% |
95.9% |
+1.9 |
| 和歌山 |
95.7% |
94.1% |
+1.2 |
| 兵庫 |
98.1% |
89.7% |
+2.2 |
| 京都 |
98.3% |
89.0% |
+3.6 |
| 奈良 |
98.3% |
83.2% |
+5.2 |
| 滋賀 |
99.5% |
76.8% |
+7.3 |
| 全国 |
98.6% |
80.3% |
+4.8 |
関西6府県の5Gとサブ6の数字。滋賀と和歌山で順位が入れ替わる作成: 編集部 / 出典: 西のITメディア編集部
和歌山の94.1%を「県内のほとんどでサブ6が使える」と読むと、外れます。サブ6展開率の分母は、全国を1km四方に区切ったうち、人口が多い13,250区画だけ。そこに2社以上のサブ6基地局がある割合なので、山あいの町はほとんど数えられていないとみられます。
滋賀はこの1年で7.3ポイント伸び、6府県で最も速いペースでした。サブ6の広がりには、衛星通信の事情も絡みます。3.7GHz帯は地球局との干渉を調整する必要があり、楽天モバイルは2025年7月の総務省の委員会で「地域によってはこれ以上の拡大は困難な状況」と説明しました。ただ、示した地図は関東のもの。滋賀に当てはまるかは不明です。
全国の目標は、2027年度末に90%。年4.8ポイントのまま進むと89.9%で、わずかに届かない計算になります。三重は茨城と同じ43.8%で、関西の隣でもここまで開きがあります。
関西は主な周波数帯で、4社とも全国を上回る
では、使っている会社では何が違うのでしょうか。手がかりは、10月30日の電波の利用状況調査にあります。滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山をまとめた近畿について、会社と周波数帯ごとの人口カバー率が分かります。
| 会社 |
周波数帯 |
全国 |
近畿 |
近畿の前年差 |
| 楽天モバイル |
3.7GHz帯 |
65.42% |
84.66% |
+3.56 |
| KDDI |
3.7GHz帯 |
56.08% |
72.20% |
+0.01 |
| ソフトバンク |
3.7GHz帯 |
53.45% |
68.04% |
+3.24 |
| NTTドコモ |
4.5GHz帯 |
51.90% |
64.61% |
+1.33 |
| NTTドコモ |
3.7GHz帯 |
33.43% |
57.60% |
+13.90 |
サブ6の人口カバー率を全国と近畿で比べた図。会社と周波数帯ごと作成: 編集部 / 出典: 西のITメディア編集部
全国の数字だけで会社を比べると、関西の実感とずれるかもしれません。楽天モバイルの84.66%は全国の11地域で最も高く、全国より19.24ポイント上です。ドコモの3.7GHz帯は1年で13.90ポイント伸び、3.7GHz帯の地域別の表で最大の伸びでした。沿線の基地局を増やしたドコモの取り組みは、関西の主要5路線の通信強化でご覧いただけます。
ただし、ドコモは2つの帯の重なりが分からないので、足せません。KDDIの4.0GHz帯だけは近畿が1.82%、全国が3.48%で、近畿が下回りました。近畿のサブ6基地局は、屋内の局を含めてKDDIが6,737局、ドコモが5,228局、楽天モバイルが3,540局、ソフトバンクが2,009局でした。
甲子園のミリ波は、別の話
28GHz帯のミリ波では、甲子園球場をKDDIが、ノエビアスタジアム神戸とユニバーサル・スタジオ・ジャパンを楽天モバイルが整備先に挙げています。電波の幅は400MHzと最も広いものの、近畿の人口カバー率は最大でもKDDIの0.65%しかありません。
ミリ波の基地局は4社の5G基地局の13.5%を占めるのに、5Gの月間通信量では0.04%でした。楽天モバイルは総務省への報告に「当初の想定に反してトラヒックは増加していない」と記しました。対応機種も限られ、Appleは高周波数帯の5Gについて「米国で販売されたiPhoneを米国で利用する場合に限られます」と案内しています。多くの人の機種選びは、サブ6を見れば足ります。
乗り換えの前に、自分で確認できること
まず、家と職場、よく使う駅を各社のエリアマップで開きます。どの社のマップも5Gが色分けされていて、見分けは難しくありません。
- ドコモは「5Gエリア(4.5GHz,3.7GHz)」がサブ6、「5Gエリア(3.5GHz,3.4GHz,2GHz,700MHz)」が4Gと同じ周波数帯です。機種を選ぶと、より正確なエリアが出ます。
- auは「5G sub6」と「5G NR化」を色で分けます。
- ソフトバンクも「5G(Sub6)」と「5G(NR化)」で分かれます。
- 楽天モバイルの5Gの凡例は、Sub6とミリ波の2つだけ。
次に、動画を流している間の表示を見ます。ドコモの案内では、待受中は「5G」のままで、3.7GHz、4.5GHz、28GHzで通信しているときに「5G+」に変わります。KDDIとソフトバンクの説明も同じで、Sub6かミリ波で通信している間に「5G+」が出ます。この表示は、利用者が周波数を正しく認識できるよう、総務省が2024年に検討を促したものでした。ただし、機種によっては「5G」のまま変わりません。
iPhoneの表示には別の注意もあります。Appleの案内によると、5Gのアイコンは「まれに、5Gネットワークが利用できない場合でも表示されることがあります」。ソフトバンクの対応iPhoneに9月29日から出る「SoftBank 5G SA」も、通信の方式の名前で、サブ6かどうかとは別の話です。総務省の調査でも、SA対応の基地局には700MHz帯があります。
機種を買い替える人や、ほかの会社で買った機種を持ち込む人は、仕様表の周波数も見ておきたいところです。ドコモの仕様表では、3.7GHzはn78、4.5GHzはn79と書かれています。近畿のドコモは4.5GHz帯のほうがカバー率が高いので、n79に対応していない機種だと、関西ではサブ6を使える場所が減ります。
最後は、混む時間の実測。ソフトバンクの解説によると、「アンテナがたくさん立っている=通信速度が速い」というわけではなく、人が多い場所では電波が強くても混雑することがあります。地図の色がサブ6でも、朝の駅と昼の自宅では別物でしょう。通勤の時間帯に速度測定アプリを使えば、自分の生活圏の数字が手に入ります。
資料に載っていない4つのこと
- 実測の通信速度は、今回の総務省の資料にありません。基地局と電波の数字なので、どの会社が速いかは決められません。
- 府県ごとの会社別の数字も、公表されていません。自分の町は、エリアマップで見るのが近道です。
- 滋賀のサブ6展開率が低い理由も、説明がありません。
- 市区町村の本庁舎で5Gが届くのは1,741のうち1,717で、98.6%でした。目標は2025年度末に100%で、届かなかった24町村の名前もわかりません。
乗り換えの相談に行くんやったら、家と駅の色だけ先に見といたら話が早いで。