「私たちのサービスにはクーリングオフ制度の適応が無くて」
留学の契約を結んだ2日後、取り消したいと申し出た人が、担当者からこう告げられました。続けて出てきたのは「10万円のキャンセル料」という言葉です。ところが、この契約は本当はクーリング・オフできるものでした。
消費者庁は10月28日、こうした説明をしていた株式会社Jstyleの処分を発表しました。本店は東京都新宿区で、「夢カナ留学」の名で留学手続の代行や英会話教室を手がけます。名前の似た別の会社と間違えないよう、消費者庁は所在地も確認するよう呼びかけています。
無料相談の申し込みが、勧誘の入口に
資料に載った3つの事例は、どれも「無料」から始まります。広告やサイトから「無料カウンセリング」や「留学診断」に申し込むと、会社から電話が来て、営業所へ来るよう求められる。契約を勧める場だとは告げられないまま足を運ぶと、その場で勧誘を受け、契約に至りました。
オンラインの形もあります。「オンライン無料相談」としてLINEでWeb会議のURLが届き、その画面の中で勧誘され、メールで届いた書面に電子署名した事例です。
| 事例 |
入口 |
勧誘と契約 |
取り消しの申し出 |
言われたこと |
| 事例1(2024年1月) |
広告から申し込み、電話で営業所へ |
営業所でその場で契約 |
契約の2日後 |
「クーリングオフ制度の適応が無くて」「10万円のキャンセル料」 |
| 事例2(2025年11〜12月) |
サイトから申し込み、「夢カナ留学のY」と名乗る電話で営業所へ |
営業所でその場で契約 |
契約の2日後 |
「サポート料金に関してはキャンセル料がかかってまいります」 |
| 事例3(2025年1〜2月) |
サイトから申し込み、LINEでWeb会議のURL |
Web会議で勧誘、メールの書面に電子署名 |
書面を受け取った翌日 |
「クーリングオフ期間をすぎてしまった」 |
3つのうち、いちばん見落としやすいのは事例3でしょう。契約の書面が届いたのは契約の9日後で、その翌日に取り消しを申し出ています。もう8日を過ぎたと思い込みそうですが、8日は書面を受け取った日から数えます。会社の「期間をすぎてしまった」という説明は事実と違う、と消費者庁は認定しました。
消費者庁の資料にある事例1。契約の2日後の申し出に、クーリング・オフはできないと告げた出典: 消費者庁「特定商取引法違反の事業者に対する業務停止命令(3か月)及び指示並びに当該事業者代表取締役に対する業務禁止命令(3か月)について」(PDF)(引用)
自分で足を運んでも訪問販売になる
自分から申し込んで、自分で営業所まで行ったのだから、もう取り消せない。そう思い込む人は多いはずです。
でも、特定商取引法の考え方は違います。消費者庁の特定商取引法ガイドによると、販売目的を告げずに電話やSNSなどで呼び出して営業所で契約させる形はアポイントメントセールスと呼ばれ、訪問販売に含まれます。Jstyleの営業所での契約も、消費者庁は訪問販売と扱いました。
LINEから入るWeb会議の勧誘は、電話勧誘販売と扱われました。どちらもクーリング・オフの対象で、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内なら、無条件で取り消せます。電話勧誘の8日は、年末のカニの電話と送り付けの記事でも取り上げました。
もちろん、どんな契約でも取り消せるわけではありません。通信販売にクーリング・オフはなく、目的を分かったうえで店へ行って結んだ契約も、ふつうはこの形に当たらないからです。
無料相談から高額な契約へ進む形は、留学に限りません。国民生活センターは2023年5月、就職活動中の学生がWeb会議の無料カウンセリングに参加して、高額なセミナーを勧誘されるトラブルに注意を呼びかけました。進路の不安を話したあとの相手には、断りにくいものでしょう。
通知が届く人、これから申し込む人がやること
止まるのは10月28日から2027年1月27日までの、訪問販売と電話勧誘販売の勧誘、申込みの受付、契約の締結です。代表取締役にも同じ期間の業務禁止が命じられました。
すでに契約した人に関わるのは、一緒に出た指示のほうです。Jstyleは2024年1月1日から2026年10月27日までに契約した全員へ、処分の内容とクーリング・オフについての事実と違う説明を、11月27日までに書面かメールなどで知らせなければなりません。
通知が届いたら、次の順に見ていくと整理しやすいはずです。
- 契約書面を受け取った日を確認する。受け取りが遅れた人は、その日から8日を数える
- 「できない」と言われて諦めた人は、8日を過ぎていても取り消せる場合があると知っておく
- 取り消すときは、はがきかメールで通知する。はがきは両面をコピーして特定記録郵便か簡易書留で送り、メールは送信記録を残す
- クレジット契約があれば、クレジット会社にも同時に通知する
- 自分の契約が当てはまるか分からなければ、消費者ホットライン188に電話する
大阪市に住む人の窓口は大阪市消費者センターで、電話は06-6614-0999。大阪府消費生活センターは06-6616-0888で、平日の9時から17時まで受け付けます。府はメールの相談も受けていますが、クーリング・オフの相談は期間が過ぎるおそれがあるので電話で、と案内しています。京都や兵庫、奈良、滋賀、和歌山からは、188で身近な窓口を案内してもらえます。処分そのものの問い合わせ先は近畿経済産業局消費者相談室(06-6966-6028)ですが、個別のトラブルのあっせんはしていません。
これから留学の無料相談に申し込む人は、電話で営業所へ呼ばれたときが分かれ目になります。事業者は勧誘の前に、会社名と勧誘の目的、売るものの種類を告げなければならない決まりです。「会社名は」「契約の話もありますか」と聞いて答えを控えておくと、後で相談するときの材料になります。その場で決めず、書面を持ち帰るのも手です。
契約の件数や被害の額、どの営業所での勧誘だったのか、すでに結んだ契約や進んでいる留学の手続きをどう扱うのかは、消費者庁の資料に書かれていません。
「無料やから」で行った帰りに契約書を持っとったら、その晩のうちにもう一回読み直しとき。