大阪市 に本社を置くシャープ が、洗濯に使った水をろ過して、次の洗濯にくり返し使う「排水レス循環型洗濯システム『トリプルフリーランドリー』」を開発しています。2026年10月6日には、この仕組みが展示会「CEATEC 2026」の「CEATEC AWARD 2026」で優秀賞を受けたと発表しました。公式の発表で確かめられることと、断水や避難所の暮らし 、水の備えとの関わりを整理します。
洗濯の水をくり返し使う、とはどういう仕組みか
シャープの発表によると、この仕組みは、洗濯に使った水をろ過・浄化してくり返し利用し、大幅な節水をめざす洗濯システムです。独自のフィルターで洗濯後の水をろ過し、次の洗濯に再利用します。
CEATECの公式サイトにあるシャープの出展ページでは、もう少し詳しく説明しています。
洗濯に特化した独自のフィルターで、何段階かに分けてろ過する(多段階ろ過)
洗濯の排水と同時にろ過を進め、ろ過した水をすぐに使えるため、予備のタンクが要らない
そのぶん全体を小さくでき、運んだり移したりしやすい。給排水の設備がない場所にも置ける
シャープが受賞を発表したニュースリリースと、システムのイメージ図 出典: シャープ株式会社(ニュースリリース) (引用)
ふつうの洗濯機は、水道から水を入れ、使った水を排水口へ流します。この仕組みは、使った水を外に流さずにろ過して回すため、水道や排水口がない場所でも洗濯ができる、という考え方です。「排水レス」という名前は、ここから来ています。
名前の「トリプルフリー」は、3つの「フリー」から来ています。平時も災害時も使える「フェーズフリー」、場所を選ばず使える「ロケーションフリー」、世界中での利用をめざす「ボーダーフリー」です。ふだんから使っているものを、災害のときにもそのまま役立てる、という発想が名前に込められています。
いつ、どこで使えるようになるのか
シャープは発表で「早期の実用化を目指し、開発を進めています」としています。CEATECの出展ページでも「開発中」と書かれています。発売の時期、価格、家庭向けに売るかどうかは、2026年10月18日の時点で、公式の発表には書かれていません。発表に載っている問い合わせ先は、法人向けの営業の部署(スマートライフ法人営業部)です。
公式の発表で確かめられること
まだ発表されていないこと
洗濯の水をろ過してくり返し使う仕組み
発売の時期
給排水の設備がない場所にも置ける
価格
避難所や水が限られる地域での利用を想定
家庭向けに売るかどうか
CEATEC AWARD 2026の優秀賞
フィルター1組で洗える回数などの数字
報道では、実用化の時期やフィルターの持ちなど、より細かい内容も伝えられています。ただ、シャープの公式の発表では確かめられなかったため、この記事には書いていません。
シャープは2023年11月の技術展示イベント「SHARP Tech-Day」でも、洗濯後の水を浄化して再利用し、限られた水でくり返し洗濯できる超節水の洗濯システムを紹介していました。今回のCEATEC 2026(10月13日〜16日・幕張メッセ)では、「社会レジリエンス」をテーマにした7つの展示の1つでした。同じブースには、地中の水道管の小さな漏水を振動から見つけ、場所を推定する「上水道漏水検知システム」も並びました。CEATEC AWARD 2026では、村田製作所 の手指の動きを計測するグローブも優秀賞を受けています(村田製作所のグローブの記事 )。
暮らしと家計への影響 家の水道代は変わるのか
いま家で使っている洗濯機や、毎月の水道代がすぐに変わる話ではありません。家庭向けの製品としての発表は、まだないためです。
関わりが大きいのは、断水したときです。大阪 市水道局が平成24〜26年度に市内の102世帯で使い道ごとの水の量を測った調査では、1人1日あたりの水の量は平均241リットル、そのうち洗濯は41リットルでした。全自動洗濯機の1回の洗濯で使う水は、平均98リットルでした。断水のとき、給水所で受け取る水でこの量をまかなうのは簡単ではありません。
避難所で洗濯ができない日が続くと、衣類だけでなく、タオルやシーツの衛生にも関わります。シャープも、この仕組みが避難所などで衛生環境の維持・向上に役立つとしています。水を外に流さず、限られた水でくり返し洗える仕組みが実用化されれば、断水の間の暮らしを支える道具の一つになりえます。
大阪・関西では 断水への備えと、この仕組みの使いどころ
シャープの本社は、大阪市中央区にあります。大阪府は、南海トラフ地震など大規模な災害では、被害の大きい地域で断水が起きることも想定されるとして、飲み水やトイレを流す水などの生活用水の確保に備えることが重要だとしています。府は、大阪広域水道企業団や大阪市をはじめ府内のすべての水道事業体と、災害のときの情報共有と支援の協定を結んでいます(2024年4月26日)。近くの人に井戸水を提供してもらえる「災害時協力井戸」の情報も、府のホームページに載せています。
関西の暮らしでは、たとえば次のような使いどころが考えられます。いずれも使い方の例で、シャープが導入先として発表しているものではありません。
避難所になる施設で、ふだんは洗濯に使い、災害のときもそのまま使う
地震や水害で給排水の設備が使えなくなった地域へ運び、洗濯の場をつくる
水道の設備を引きにくい場所で、洗濯の場所を確保する
今日からできること 洗濯の水も備えに入れる
飲み水とは別に、生活用水を考える。 大阪府も、トイレを流す水などの生活用水への備えを呼びかけています。洗濯は後回しになりやすいので、着替えや下着を数日分多めに用意しておくと安心です。
近くの災害時協力井戸を確かめる。 大阪府のホームページから、近所に協力井戸があるかを見ておきます。
住んでいるまちの給水の案内を見ておく。 断水のときにどこで水を受け取れるかは、市町村や水道局の案内で確かめます。
施設や自治体の担当者は、続報を待つ。 発売の時期や価格は未発表です。シャープの発表には、法人向けの問い合わせ先が載っています。
洗濯の水をくり返し使う仕組みは、まだ開発の途中です。製品になる時期や形が発表されたら、避難所の備えにどう組み込めるかを、あらためて確かめたいところです。