地図を見なくても、スマホが災害の危険を音声で教えてくれる。京都市が10月21日に本運用を始める「耳で聴くハザードマップ」のニュースは、京都市、耳で聴くハザードマップを導入へ 避難情報を音声で確認でお伝えしました。では、大阪ではどうなのか。調べると、この仕組みは国の事業ではなく、自治体が契約した地域でしか使えないこと、そして大阪府・大阪市・堺市はまだ導入していないことが分かりました。仕組みの背景と、大阪での災害情報の届け方を深掘りします。
「耳で聴くハザードマップ」は、国のデータを使う民間のアプリ
「耳で聴くハザードマップ」は、音声コードを読み取るアプリ「Uni-Voice Blind(ユニボイス・ブラインド)」の機能です。開発と運用はUni-Voice事業企画で、視覚障害者の情報支援に取り組むNPO法人の日本視覚障がい情報普及支援協会(JAVIS)が企画と監修をしています。災害のリスクの情報には、国土地理院の「重ねるハザードマップ」の公開データを使っています。
背景には、国の取り組みがあります。国土交通省の検討会が2021年に行った調査では、障害に応じたハザードマップを作っていた市区町村は、回答した1,591のうち41にとどまりました。国交省は2023年、「地図情報だけでは視覚障害者には伝わらない」として、重ねるハザードマップに、読み上げソフトで使える文字の情報を加えました。民間のアプリは、この公開データを使い、現在地の周りのリスクの読み上げや、音と振動による避難場所への案内を形にしたものです。
自治体ごとの契約、大阪はまだ導入していない
このアプリでハザードマップを聞けるのは、自治体が利用の契約をしている地域だけです。料金は、都道府県ごと(政令市と東京23区を除く)に月10万円、政令市と東京23区ごとに月5万円です(防災DX官民共創協議会のサービス紹介に、提供元が載せた情報による)。住民はアプリを無料で使えます。
提供元の導入自治体の一覧。関西では三重県・和歌山県・神戸市が並び、大阪はない出典: Uni-Voice事業企画(引用)
提供元によると、導入しているのは20の都道府県と15の政令市の、あわせて35の自治体です。関西とその周辺では、神戸市(2024年12月から)、三重県、和歌山県(2026年4月から県内全域)が導入しています。京都市は10月から加わります。一方、大阪府・大阪市・堺市が導入しているという情報は見つかりませんでした。大阪府内では、大阪市と堺市は市として、それ以外の41市町村は府として契約する形になるため、今は大阪の住所の災害リスクを、このアプリで聞くことはできません。
大阪では、音声と多言語の災害情報をどう届けているか
大阪にも、目で見る以外の手段はあります。
- 大阪市は2026年5月、「水害ハザードマップ(音声読み上げ版)」のページを作りました。ホームページの読み上げ機能で、区ごとの浸水の深さや避難所などを音声で確かめられます。大阪市が想定する水害は、川の氾濫、内水の氾濫、津波、高潮の4つです
- 大阪府と大阪市の「大阪防災アプリ」は、読み上げ機能で視覚障害のある人に配慮し、英語・中国語・韓国語・やさしい日本語にも対応しています
- 堺市は区ごとの防災マップの点字版とデイジー(音声)版を、豊中市は総合ハザードマップの音訳版を用意しています
大阪市の水害ハザードマップ(音声読み上げ版)。2026年5月29日に作成出典: 大阪市(引用)
ただ、大阪府への視覚障害者団体の要望には、点字版や音声版のハザードマップを作るよう市町村を指導してほしい、という声が続いています。府は、作った例を紹介するなどして市町村に働きかけていくと答えています。
法律が求める「同じ情報を、同じ時に」
背景には法律もあります。2022年に施行された障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法は、国と自治体に、障害のある人が防災の情報を速く確実に得られるようにするための施策を求めています。2024年4月には障害者差別解消法の改正で、会社などの事業者にも「合理的配慮」の提供が義務になりました。
災害のときに支援が要る人ごとの「個別避難計画」は、2021年の法改正で市町村の努力義務になりましたが、内閣府と消防庁の2026年4月時点の調査では、全国で計画ができている人は約101万人で、名簿に載っている約670万人の約15%にとどまります。音声で聞ける地図は、自分で事前に危険を知るための一つの手段です。
大阪・関西の暮らしと仕事でできること
- 家族に目の見えにくい人や高齢の人がいるなら、大阪市の音声読み上げ版や大阪防災アプリで、自宅の周りの危険と避難所を一緒に確かめておく
- 京都・神戸・和歌山などへ出かけるときは、耳で聴くハザードマップのアプリで、行き先の周りの危険を事前に聞いておく。ただし、提供元は避難場所への案内を「平常時に経路を確かめるための参考」と位置づけ、災害時は周りの人の助けを借りるよう案内している
- 店やホテル、職場では、目の見えにくいお客さんや従業員、日本語が得意でない人に、災害の情報をどう伝えるかを決めておく。合理的配慮の一つとして考えたい
- 自分の住む市でも導入してほしい場合は、府や市の防災の担当課か障害福祉の担当課に伝える。提供元も、そう案内している
覚えておきたいこと
- 耳で聴くハザードマップは、国のデータを使う民間のアプリで、都道府県か政令市が契約した地域だけで使える。
- 関西では神戸市・三重県・和歌山県が導入済みで、京都市が10月から加わる。大阪府・大阪市・堺市はまだ。
- 大阪では、大阪市の音声読み上げ版のハザードマップや大阪防災アプリの読み上げ機能が使える。