図書館の「障がい者サービス」は、手帳を持つ人だけのものでしょうか。大阪市立図書館では、介護保険の認定を受けた人なども登録できます。老眼鏡をかけても文庫本の字を追えなくなった親がいる家なら、知っておいて損はありません。
大阪市教育委員会は2026年10月27日から、「大阪市読書バリアフリー計画(仮称)」の素案への意見を募っています。2019年に施行された読書バリアフリー法にもとづく計画で、市がこの分野だけの計画を作るのは初めてです。期間は2026年度から2030年度まで。12月に策定する予定です。
大阪市読書バリアフリー計画(仮称)素案の概要版出典: 大阪市教育委員会「大阪市読書バリアフリー計画(仮称)」素案(概要版)(引用)
「障がい者」という名前が、利用を遠ざける
素案がまず挙げた課題は、支援が使われていないことでした。録音図書などの貸し出しも対面朗読も、利用は「障がいのある人の割合に比して多くなく」、まだ表に出ていないニーズがあるという見方です。その原因として、素案は支援が「知られていない」ことを真っ先に挙げました。
数字を並べると、届いていない様子が見えてきます。大阪市で目の障がいの手帳を持つ人は、2025年3月末で10,026人。一方、点字や録音の本をネットで配る「サピエ図書館」の個人会員は、全国で2万2,352人(2026年3月末)です。国の調査では、目の障がいで手帳を持つ人は全国に約27万3,000人。会員はその1割にも届きません。国立国会図書館のデータ送信サービスに個人で登録した人は、全国で1,073人でした。
では、なぜ使われないのか。素案には、市の仕組みの弱点を率直に認めた一文があります。
支援の対象を「障がい者」とすることで、本人が障がいを受容していない場合や、障がい者手帳等の有無に関わらず困りごとを抱えている場合に、支援につながりにくいことがあります。
出典: 大阪市教育委員会「大阪市読書バリアフリー計画(仮称)」(素案)
名前で損をしている支援なのかもしれません。
図書館の利用案内を読むと、登録できる人の幅は名前の印象よりずっと広いのです。手帳のある人のほか、介護保険の認定を受けている人、発達障がいの認定を受けている人、支援学校に通う子や特別支援教育を受けている子も入ります。住まいは市内か八尾市内、または市内への通勤・通学が条件。録音図書は、加齢による視力の低下で活字が読みにくい人も借りられます。
24館のどこでも同じ、ではない
「全24館で使える」ものと「一部の館だけ」のものが混ざっているのも、分かりにくさの一因でしょう。素案の巻末の表と図書館の案内を突き合わせると、次のようになります。
| 支援 |
使えるところ |
| 拡大読書器、録音図書やマルチメディアデイジーの申し込み |
全24館 |
| 音声デイジーの再生機、来館での対面朗読 |
中央や旭、阿倍野など12館 |
| オンラインの対面朗読(Zoom) |
自宅から。中央図書館の開館日の9時30分〜17時 |
| 郵送での貸し出し |
中央図書館だけ(重度の障がいなどで来館が難しい人) |
| 点字の携帯端末 |
中央図書館だけ |
録音図書のCDは全館で申し込めても、再生機と対面朗読室がそろう館は半分です。北区や天王寺区、西成区などの12館には、対面朗読室がありません。家に再生機がない人は、最寄りの館がどちらに入るかを先に見ておくと、行ってから困らずに済みます。
素案の巻末の表のうち、録音図書と音声デイジー再生機の行出典: 大阪市教育委員会「大阪市読書バリアフリー計画(仮称)」(素案)(引用)
電子書籍は、まだ音声で読む人向けになっていません。大阪市立図書館の電子書籍は「EBSCO eBooks」で、図書館の案内によると、学術書や専門書が中心です。素案は電子図書館の充実として「オーディオブックの導入検討」を挙げますが、今の図書館で聞けるオーディオブックは朗読CDに限られます。音声の読み上げで読める電子図書館を持つ枚方市立図書館などとは、ここが違います。
家族が登録するときの手順
手帳がない家族の登録を手伝うなら、次の順で進めると早く済みます。
- 中央図書館の障がい者サービス担当(06-6539-3304)に電話し、本人の状態と使いたい支援を伝える。
- 手帳がない場合に何を見せればよいかを、その電話で聞いておく。
- 名前と住所が分かる証明書を持って図書館カードを作り、障がい者サービスを申し込む。
- 録音図書を借りたいときは、著作権法の決まりで要る別の申し込みも済ませる。
郵送で借りられる人なら、図書館カードの登録も電話で済みます。借りられるのは本やCDを合わせて20点まで、期間は32日間。延長はできないかわりに、最初から長めに取ってあります。本人の図書館カードを持っていけば、家族が代わりに借りることもできます。
大阪市立図書館にない録音図書も、全国のどこかの図書館で作られていれば無料で取り寄せてもらえます。目の見えない人や見えにくい人なら、西区の日本ライトハウス情報文化センターと、東住吉区の市立早川福祉会館点字図書室も相談先になります。
国立国会図書館の「みなサーチ」は個人で、サピエ図書館は図書館などから申し込んで登録すれば、自宅のスマートフォンやパソコンでデータを受け取れます。ただ、素案が引く市の調査では、障がいのある人の17.9%が、スマホやパソコンなどの機器を「いずれも使わない」と答え、その理由の約4割は「使い方が分からないので、面倒だから」でした。スマホに不慣れな親なら、まずはCDと再生機か、対面朗読から始めるほうが続きやすいでしょう。
数値の目標がない素案に、何を伝えるか
素案は目標を2つ掲げますが、測るのは「アクセシブルな書籍等の貸出点数」と「啓発イベントの回数・参加者数」です。何点まで増やすという数字はありません。初めての計画なので、まず周知と現状の把握に力を入れ、次の計画で具体策を深める段取りです。
全国を見ると、2026年2月時点で20の政令指定都市のうち、計画を作り終えていたのは9市でした。大阪府は2021年3月に計画を作り、2026年3月に第二期の計画を定めました。後から作る分、大阪市は府やほかの市の目標の立て方を参考にできるはずです。
意見は11月24日まで、メール(bfrosaka@city.osaka.lg.jp)、ファクス(06-6539-3336)、郵送、中央図書館1階の窓口、大阪市行政オンラインシステムで出せます。電話での受け付けはありません。素案には点字版や音声デイジー版、ルビ付きの版、テキスト版も用意されました。意見と市の考え方の公表は、12月下旬ごろの予定です。
たとえば「近くの館でも再生機を使いたい」「読み上げのできる電子書籍がほしい」のように、家族が困った場面を一つ書くだけでも、市が探している「知られていない」ニーズの手がかりになるはずです。
字が読みにくなった親の代わりに、まずは図書館へ電話一本かけるところからでええんちゃうかな。