大阪府と大阪市は、行政の仕事に生成AIを取り入れる取り組みを、ここ数年で広げてきました。大阪市は2026年3月に「AI活用基本方針」を定め、大阪府は企業と組んだ「行政AIエージェント」の実証を進めています。この記事では、府と市の公式の発表と資料をもとに、暮らしや店に関わるところを整理します(内容は2026年10月4日時点)。
大阪市は、全職員で生成AIを使って2年
大阪市は、職員向けの「大阪市生成AI利用ガイドライン」を2024年に定め、2024年度から全職員による本格的な利用を始めました。府と市の戦略の資料によると、文章の作成・要約・添削などに使い、職員の約半数にあたる10,000人以上が利用しています。ガイドラインは改定を重ね、2025年12月22日に第2.4版になりました。
専門の知識が要る業務では、市の資料を読ませて答えさせる仕組み(RAG)も整えています。市の「DX戦略アクションプラン」(2026年3月)では、利用している職員に「業務効率化に繋がっていると思う」と答えた人の割合を指標にしています。2025年度は、目標の70%に対し89%と示されています。
職員が守るルールは、ガイドラインに
ガイドラインの第2.4版は、すべての利用環境に共通するルールとして、出力に誤りや偏り、差別的な表現がないかを必ず自分で確かめること、他人の知的財産権を侵していないかを確かめることを求めています。AIが出した文章はあくまで検討の素材で、使うときは職員が責任をもって判断するとしています。2025年10月の第2.3版では、市民や事業者に直接対応する生成AIの利用を検討する場合の取り扱いも加えました。
2026年3月に「AI活用基本方針」を策定
大阪市は2026年3月26日、「大阪市AI活用基本方針」を定めました。AIには暮らしや仕事を大きく変える可能性がある一方、誤判断や情報漏えいなどのリスクに対応する必要があるとして、市がAIを使うときの基本姿勢と原則を、市民などに示すものです。
方針は、AIを「新しい価値や成果を生み出す職員との共創パートナー」と位置づけています。人間中心・市民第一・説明責任・透明性などの「11の原則」にそって使うとしています。
手続きの審査にAIエージェントを試す
大阪市は日立製作所と、AIエージェント(目標に向けて自分で手順を進めるAI)の共同検証を、2025年9月から2026年3月まで行いました。対象は、市の総務局が年間約10,000件扱う職員の通勤届です。試算では、申請と審査の業務時間を将来的に最大約40%短くできる可能性を確かめたとしています。
市は2026年度に、行政オンラインシステムで受け付けた申請の審査に使う実証を行う予定です。申請する市民の入力の案内や、不備を減らす使い方も検討するとしています。
大阪府は、AIエージェントの実証を広げている
大阪府は、2023年10月31日の会議で生成AIの全庁のトライアルを決め、11月6日から翌年1月26日まで試しました。このとき示した基本方針の試案では、個人情報など機密性の高い情報は入力しない、回答の根拠や裏付けを必ず自分で確かめる、回答を外向けにそのまま使う場合はその旨を明記する、といったルールを挙げています。いまは、企業と組む「大阪府行政AIエージェントコンソーシアム」で実証を進めています。2025年12月19日に設立式を開き、参加は42団体です(2026年9月4日時点)。
2025年度に行った実証は次の3つです。
| 時期 |
組んだ企業 |
中身 |
| 2026年1〜3月 |
アマゾン ウェブ サービス ジャパン |
府税事務所の自動車税の申請書類の審査 |
| 2026年2〜3月 |
日本マイクロソフト・Sky |
府立高校の校務事務の支援(職員からの質問への回答、あいさつ文の作成) |
| 2026年3月 |
グーグル・クラウド・ジャパン・富士通Japan |
関西国際空港で働く外国人従業員への病院の案内 |
府は2026年度、府の各部署と府内の市町村に対象の手続きを広く照会し、実証の範囲を広げるとしています。
大阪府が示すAIエージェント実証の進み方(2026年8月17日時点)出典: 大阪府「AIエージェント実証事業」(引用)
府は、府民の声を集める方法にもAIを使い始めています。2025年11月27日から12月31日まで、大阪公立大学などと組んで「ブロードリスニング」の実証を行いました。「#大阪スマートシティ」を付けたXやInstagramの投稿などから「デジタル化すれば便利と思うサービス」への意見を集め、寄せられた245件をAIで分析しています。
ブロードリスニングの実証で、府民の意見を分析したワードクラウド出典: 大阪府「大阪府ブロードリスニング実証実験」(引用)
生成AIで情報を届ける「my door OSAKA」
大阪府のポータル「my door OSAKA(マイド・ア・おおさか)」は、2024年8月29日に始まりました。一人ひとりに合わせた情報の配信や、オンラインの行政手続きをまとめて提供するものです。連携しているのは大阪府・堺市・羽曳野市・岸和田市で、2026年2月時点で約10,000IDです。
府と市の戦略の資料によると、たとえば「1歳半の子どもがいる親」のように同じ条件の住民に、生成AIで分かりやすく作った情報を届ける取り組みを始めています。堺市では、保育施設の入所調整の結果を、希望した約850人にスマートフォンなどで知らせ、3時間で80%以上が開いたとしています。
府と市の共同の戦略は、2030年が目標
大阪府と大阪市は2026年4月3日、今後5年間の新しい戦略「次世代型スマートシティOSAKA」を策定したと発表しました。目標の年は2030年で、目標は「住民QOLの向上」と「都市競争力の強化」の2つです。案への意見募集では、4者から6件の意見が寄せられました。
大阪市も同じ2026年3月26日に「大阪市CXサービスグランドデザイン(基本方針)」を定めました。市民や事業者、大阪を訪れる人の体験を重視し、2040年の大阪市にふさわしい行政サービスへの変革をめざすものです。総合サービスポータルとコンタクトセンターを入り口にし、最終的には「パーソナルAIと人が連携し一人ひとりに最適な体験に」という姿を描いています。
暮らしの中で使えるものとしては、大阪市の行政オンラインシステムがあります。利用者登録は約100万人(2026年1月時点)で、2025年度末までに約2,000の手続きをオンラインにする予定と資料にあります。
府内の店や中小企業が使える支援
大阪府は「大阪デジタル・AI活用促進プロジェクト」(2026年4月1日に名前を変更)で、府内の中小企業のデジタル・AIの活用を後押ししています。実施は公益財団法人大阪産業局で、無料の相談と、人材を育てる講座・セミナーがあります。
大阪市は、AIで新しいサービスを作りたい企業や個人のチームを募る「TEQS AI QUEST プロトタイプ・ガレージ」を行います。募集は2026年10月21日まで、実施は11月5日から12月15日まで、6チーム程度で参加は無料です。
たとえば、商店街の店が予約や問い合わせの対応にAIを取り入れたい場合、まず無料相談で何から始めるかを整理する、という使い方ができます。町工場がAIを組み込んだ新しい製品を考えているなら、開発プログラムが試作の場になります。
関西のほかの自治体では
京都府の資料(2026年3月10日の府議会の委員会)によると、京都府は生成AIを使った「府税生成AIチャットボットサービス」で、自動車税などの質問に24時間答えています。利用は約5,000回です(2026年1月末時点)。職員の生成AIの利用率は約60%で、業務時間の削減の効果は職員1人あたり年に約160時間としています。
神戸市は、2026年1月から市のホームページで、検索結果を生成AIで要約する機能を入れました。入力した内容は生成AIの学習には使わないと案内しています。
今日からできること
- 大阪市民なら、行政オンラインシステムで使える手続きを一度確かめておく
- 府・堺市・羽曳野市・岸和田市に住む人は、my door OSAKAで受け取りたい情報を設定してみる
- 店や中小企業は、大阪デジタル・AI活用促進プロジェクトの無料相談を検討する
- AIで新しいサービスを考えているなら、TEQS AI QUESTの締切(10月21日)を確かめる
役所のAIの使い方は、暮らしの手続きにも少しずつ届き始めています。使える窓口から、気軽に触ってみてな。