見つかったのは、11月の料金の見直しに向けて、計算をし直している途中でした。
関西電力は2026年9月17日、家庭向けなどの規制料金のもとになる原価を、2024年4月から多く見積もっていたと公表しました。経済産業省への報告によると、8月上旬に疑いを持ち、送配電会社に問い合わせるなどして確かめたそうです。
原因は、一部の発電所の電圧の読み違いでした。発電側課金という仕組みがあります。送電線や変電所にかかる費用の一部を、発電する側にも負担してもらうもので、2024年4月に始まりました。発電所の条件によって割引があり、関西電力は資料にあった「受電電圧154kV」を、区分を決める基準の電圧として扱ってしまいました。ところが、この154kVは電力系統を表すときの代表の値で、判定に使う数字ではなかったのです。
本来より小さい割引で計算したため、発電側課金が高くなりました。その分、規制料金の原価は3年で約1,400万円、1年で約500万円多かったことになります。
差は月1円、返すのは32円
影響が出た可能性のある契約は、2026年8月末の時点で約492万件。9月29日に関西電力が経済産業省へ出した報告では、請求への影響は1か月に最大1円で、期間は2024年4月分から2026年11月分までの最大32か月分です。11月1日からの新しい料金には、正しい割引が入りました。
関西電力が経済産業省に出した報告の、利用者への影響と返還の考え方のページ出典: 関西電力「規制分野における電気料金の原価算定および単価設定誤りに係る調査結果の報告」別紙(PDF)(引用)
10月27日に決まった返還の額は、1件につき32円。月1円を32か月分という計算で、契約容量や契約電力が50kWを超える契約などは64円になります。
32円が戻ってくると聞いて、どう思うでしょうか。拍子抜けするほど小さな額です。でも、割り算をしてみると別の面が見えてきます。原価のずれ約1,400万円を3年と492万件で割ると、1件あたりは1年で1円に届きません。つまり、32円は実際の差より多めの額だとみられます。関西電力は報告で「可能な限り返還不足を生じさせない」という考えを示しており、上限でそろえて返す形を選びました。492万件に32円を掛けると約1億5,700万円で、原価のずれの10倍を超えます。
経済産業省は9月29日、同じ誤りを繰り返さない手立てを徹底するよう関西電力を指導しました。返還がどこまで進んだかも、そのつど報告するよう求めています。
自分が対象か、契約の名前で分かる
対象は、2024年4月1日から2026年10月31日までの間に、次のどれかを契約していた人です。家庭なら、ほとんどが従量電灯Aでしょう。
- 従量電灯A、従量電灯B
- 低圧電力
- 公衆街路灯B・C、農事用電力(脱穀調整用電力を除く)
- 臨時電灯B・C、臨時電力(定額制供給を除く)
なっトクでんきやはぴeタイムR、eおとくプラン、時間帯別電灯は入りません。関西電力の資料では、どれも今回誤りがあった約款とは別の約款の契約です。
契約しているメニューの名前は、検針票の「ご契約種別」の欄で分かります。ただ、紙の検針票は希望した人にしか届きません。手元にない家は、Webのはぴeみる電で料金を見られます。
10月27日に関西電力が公表した返還の方針(対象と金額、返し方)出典: 関西電力「規制分野における電気料金の原価算定および単価設定誤りに係る返還措置方針」(PDF)(引用)
今も対象のメニューを契約していれば、返還する月の電気料金から差し引かれるだけで、手続きは要りません。その月に契約を休止している人には、関西電力が別に返します。
すでに契約を終えた人は、少し手間がかかります。他社に乗り換えた家庭、卒業や転勤で部屋を引き払った人、親の家の電気を解約した家族も、期間中に従量電灯Aだったなら対象です。受け取るには、関西電力が設ける専用ダイヤルに自分から電話して、契約と振込先の口座を伝えます。関西電力の中でなっトクでんきなどに切り替えた人も、発表の書き方では「対象の契約種別のご契約を終了」した人に当たるとみられます。
家計への影響は、11月の見直しのほうが大きい
32円は、モデルの家庭の1か月の電気代8,251円の0.4%ほど。家計にはむしろ、同じ秋に始まった料金の見直しが響きます。
電気を家まで届ける送配電網の使用料、託送料金が11月1日に変わり、関西電力も同じ日に電気料金を改めました。従量電灯Aでは、最初の15kWhまでの最低料金が522.58円から763.81円になり、241.23円上がります。そのうえ、1kWhごとの単価も0.68円ずつ高くなりました。
関西電力の11月分のお知らせでは、月260kWh使うモデルの料金が8,251円で、10月分より1,318円高くなります。うち408円が今回の見直しの分で、910円は10月分まで入っていた国の料金支援がなくなった分です。
最低料金の上げ幅が大きいため、使う量が少ない家ほど、上がる割合は大きくなります。単価から計算すると、次のとおりです。
| 1か月の使用量 |
見直しで上がる額 |
上がる割合 |
| 100kWh |
約299円 |
約13.7% |
| 260kWh(モデル) |
約408円 |
約6.6% |
| 400kWh |
約503円 |
約5.0% |
割合は、燃料費調整額と再エネ賦課金を除き、口座振替割引の55円を引いた額で計算しました。一人で暮らす親の家のように電気をあまり使わない家では、上がる額は小さくても、割合はモデルの2倍ほどになります。
もう一つ、規制料金ならではの事情があります。燃料費調整の単価に上限があり、今はそこで止まっているのです。関西電力の12月分のお知らせによると、平均燃料価格は1kLあたり5万9,200円で、上限の4万700円を超えました。だから従量電灯Aなどの単価は1kWhあたり2円24銭にとどまり、なっトクでんきなどの5円30銭より3円6銭安いままです。
月260kWhなら、この差だけで約800円。見直し後の単価で12月分を比べると、従量電灯Aが8,251円、なっトクでんきは約8,755円です。セット割引やポイントは入れていない計算ですが、燃料が高い今は、規制料金のままのほうが安い家もあります。
「返金します」の連絡には乗らない
返還は、契約中の人なら請求から引かれるだけです。電話やSMSで口座やカードの番号を聞かれる理由はありません。
関西電力は2023年から、自動音声の電話やSMS、LINEで料金の未払いを持ち出し、支払いを急がせる連絡が増えているとして、注意を呼びかけてきました。客からの申し出なしに、そうした知らせを送ることはないといいます。返還の話が知られた今、「返金の手続き」を名乗る連絡が出てきてもおかしくないでしょう。契約を終えた人も、関西電力が発表する専用ダイヤルに自分からかければ足ります。
差し引く月や明細での表示のされ方、専用ダイヤルの番号と受付の始まりは、11月1日現在まだ決まっていません。関西電力は「システム・実務面の準備が整い次第」知らせる、と発表しました。年明けに重なるほかの家計の変更は、関西の家計カレンダー2027年1〜7月にまとめました。
11月からの料金は、もう誤りがないことを確認した、と関西電力はいいます。そのうえで、料金を変えたあとは最初の請求明細を受け取った段階で、計算と実際の請求を突き合わせるそうです。
32円では缶ジュースも買われへんけど、検針票の契約の名前を見直すきっかけにはちょうどええわ。