JR東海は2026年10月16日、東海道・山陽新幹線の次の車両「S0系」を発表しました。今のN700S以来のフルモデルチェンジ(車両を全面的に新しくすること)で、2029年7月に営業運転を始める予定です。発表の資料に書かれていることを乗る人の目線で整理し、新大阪・京都から乗る人への影響もまとめます。
S0系で何が変わるのか
発表の要点は次のとおりです。
| 項目 |
発表の中身 |
| 営業運転 |
2029年7月の予定。その前の2028年8月に、確認試験車を1編成入れる予定 |
| 入れる数 |
2029年度8編成、2030年度7編成、2031年度7編成、2032年度上期3編成の計25編成。その後の計画は未定 |
| 自動運転 |
運転士が運転室に乗る自動運転(GOA2)のシステムを載せる |
| 地震への備え |
地震を検知してからブレーキがかかり始めるまでを、2秒程度から0.2秒程度に縮める |
| グリーン車 |
2種類の座席。足元を広げ、パウダーコーナーをつくり、Wi-Fiを広げる |
| 普通車とグリーン車の共通 |
デッキの荷物置場を6か所から9か所に。荷棚・トイレ・洗面所も広げる |
| 環境 |
編成全体の消費電力量をN700Sより約6%減らす。車体の骨組みの再生アルミの割合を約20%に |
| 料金・運賃 |
発表に記載なし |
名前は、新たな進化の基点を表す「0」に、ShinkansenとSupremeの「S」を付けたものです。先頭の形は、鳥の翼の風切羽(かざきりばね)になぞらえた新しい「ツイン リーメクス形」です。N700Sと同じく、さまざまな両数の編成を組みやすい「標準車両」としています。
JR東海が公表したN700S(左)とS0系(右)のイメージ。帯などのデザインは今後決める出典: 東海旅客鉄道(JR東海)(引用)
「自動運転」でも運転士は乗る
JR東海は、S0系の自動運転を「GOA2」とし、「運転士が運転室に乗務する自動運転」と定義しています。運転士のいない無人の運転ではありません。
発表によると、動き方は次のとおりです。
- ダイヤなどの情報をもとに、電気を無駄にしない走り方になるよう「計画速度」を決める
- ボタンを押して出発すると、計画速度に従って自動で走り、時刻どおりに着いて駅の決まった位置に止まる
- 途中で急に徐行が必要になったときも、最新の情報で計画速度を自動で作り直し、遅れを取り戻すように走る
情報は「ミリ波列車無線」で受け取ります。ミリ波帯(40GHz帯)の電波を使う、高速・大容量の列車無線です。
駅の決まった位置に止める制御(TASC)は、2026年9月から東海道新幹線の全営業列車で使われています。運行管理システム「コムトラック」の運転情報をミリ波列車無線で車両に送る仕組みは、2030年度末から使う予定です。
S0系の発表には、運転士や車掌の仕事がどう変わるかは書かれていません。JR東海は2025年9月の発表で、自動運転の開発を、効率的な業務の体制をつくる「業務改革」の一環としていました。その発表では、自動運転の車両を入れるのに合わせて、運転士が運転台でドアを開け閉めする機能も入れるとしています。
車掌の乗務がどうなるかは、2025年の発表にも記載がありません。
地震のとき、ブレーキが早くかかり始める
今の仕組みでは、地震を検知してから送電を止め、ブレーキがかかり始めるまでに2秒程度かかります。S0系では、地震を検知した情報をミリ波列車無線で車両に直接送り、0.2秒程度でブレーキをかけ始めます。今の仕組みに、新しい仕組みを加える形です。
時速285キロは秒速約79メートルです。ブレーキが約1.8秒早くかかり始めると、それまでに進む距離は約140メートル短くなります(編集部の計算)。
さらにブレーキの制御を改良し、時速285キロから地震で止まるときのブレーキ距離を、N700Sより約5%短くします。
この2つは、今の車両にも2029年10月以降に順に加える予定です。地震を早く知らせる仕組みはN700Sが、ブレーキの改良はN700SとN700Aが対象です。2032年7月までに廃車にする予定のN700Aは除きます。
グリーン車は2種類の座席に
グリーン車は、過ごし方や好みに合わせて選べる2種類の座席になります。
| 号車 |
座席 |
主な特徴 |
| 8号車(68席)・9号車(64席) |
多機能アームレスト座席 |
スマホホルダー、ドリンクホルダー、ひじ掛けにしまう大型テーブル |
| 10号車(48席) |
パーティション座席 |
となりの席との間の大型の仕切り、ひじ掛けにしまう大型テーブル |
S0系のグリーン車の2種類の座席と、号車ごとの席の配置出典: 東海旅客鉄道(JR東海)(引用)
座席の図の10号車には、「Supreme Class」の個室タイプ(Cabin・1席)と半個室タイプ(Seat・6席)も描かれています。Supreme Classは、JR東海とJR西日本が東海道・山陽新幹線に入れている、グリーン車より上のクラスの席です。半個室タイプは、2027年12月15日以降に始まる予定です。
ほかに、グリーン車では次のことが変わります。
- 足元: 跳ね上げ式のフットレストにし、リクライニングできる角度を調整して、足元をN700Sより約140mm広げる。後ろの席の圧迫感も減らす。同じ日に発表されたグリーン車の座席の改良では、リクライニングの角度を123度から116度にするとしている
- 揺れ: 揺れを抑える装置(フルアクティブダンパ)の制御を改良し、列車がすれ違うときの横の揺れを約10%減らす。対象はグリーン車の8〜10号車と普通車の7号車
- パウダーコーナー: 9号車のデッキに、身だしなみを整える場所をつくる
- Wi-Fi: 無料のWi-Fi「S Wi-Fi for Biz」を、今の7・8号車に加えて9・10号車にも入れる。8〜10号車には5Gに対応した透明のガラスアンテナを載せ、通信を安定させる。JR西日本の社長会見の資料は、このWi-Fiを「従来の約2倍の通信容量等を備えた」サービスと説明している
グリーン車の新しい座席などは、S0系より先に、2027年12月以降に入れるN700Sの新しい車両から取り入れます。今のN700SとN700Aの一部も、2028年4月以降に順に改造します。Wi-Fiを広げる改造は、N700Sで2027年1月以降に始めます。
普通車も変わる 荷物置場、荷棚、トイレ
普通車とグリーン車に共通して、次のことが変わります。
- 荷物置場: デッキの荷物置場を6か所から9か所に増やす(資料の図では3・7・15号車)。観光の需要が高まり、スーツケースなどの大きな荷物を持って乗る人が増えているため
- 荷棚: 客室の荷棚を広げる。先頭車は高さと奥行きを広げて約25%、中間車は奥行きを広げて約5%増える
- トイレ: 女性専用トイレを約25%広くし、中にベビーベッドを置く。男性専用トイレの扉を、折り戸から引き戸にする
- 洗面所: 入り口の幅(間口)を広げる(1・7・11号車を除く)
- 座席: 普通車でも、リクライニングできる角度を調整する
発表の改造の計画では、荷物置場・荷棚・トイレと洗面所の改良は、今の車両の改造の対象になっていません。車いすスペースの数や多目的室については、S0系の発表に記載がありません。
料金は変わる? S0系の発表には記載なし
S0系の発表には、料金や運賃の記載はありません。S0系に乗るときに別の料金がかかるかどうかも書かれていません。
ただ、同じ10月16日に、JR東海とJR西日本は、のぞみ・みずほの料金の見直しを連名で発表しました。S0系とは別の発表ですが、関西から東京や博多へ動く人の出費に関わります。
- のぞみ・みずほの指定席特急料金: 2027年7月1日の購入分から上がる。自由席の特急料金は変わらない
- グリーン料金(すべての列車のグリーン車): 2027年12月15日の乗車分から上がる
| 区間(通常期・おとな片道) |
今 |
改定後 |
| 新大阪〜東京 普通車指定席 |
14,720円 |
15,420円(+700円) |
| 新大阪〜博多 普通車指定席 |
16,020円 |
16,300円(+280円) |
| 新大阪〜東京 グリーン車 |
19,590円 |
23,290円(+3,700円) |
| 新大阪〜博多 グリーン車 |
22,090円 |
26,170円(+4,080円) |
金額は、のぞみ・みずほに乗るときの運賃と料金を合わせた額です。グリーン車の改定後の額は、2027年12月15日以降に乗る場合の額で、指定席特急料金の改定も含みます。
のぞみ・みずほの料金について、両社は、物価の上昇で安全やサービスを保つ費用が上がっていることを理由に挙げています。グリーン料金は、座席の整備や専用の待合室などのサービスの向上を踏まえて改定するとしています。EXサービスの値上げは新幹線のEX予約・スマートEXが値上げ 新大阪〜東京は片道700円増で紹介しました。
大阪・関西から乗る人には、何が変わる?
山陽新幹線を走るかは、まだ書かれていない
発表の題は「東海道・山陽新幹線 次期新幹線車両」です。名前の「0」も、東海道・山陽新幹線の新たな進化の基点を表すとしています。
ただ、S0系をどの列車に使うか、新大阪から先の山陽新幹線をいつから走るかは、発表に書かれていません。
山陽新幹線(新大阪〜博多)を受け持つJR西日本は、10月16日の社長会見で、のぞみ・みずほの料金の見直しを説明しました。JR西日本のニュースリリースには、S0系についての発表はありません(10月17日時点)。
京都・新大阪で先に変わること
- 待合室: 京都駅と新大阪駅の改札内に、グリーン車とSupreme Classを使う人の専用の待合室ができる予定。京都駅は2027年12月15日、新大阪駅は2028年度。無料のソフトドリンクとWi-Fi、席ごとのコンセントがあり、係員がいるとしている。営業時間や使える条件は、これから発表される
- グリーン車の座席: 新しい座席は、JR東海とJR西日本の連名の発表で、N700AとN700Sの8〜10号車が対象。2027年12月15日以降に順に始まる(数年のうちに廃車にする車両を除く)
暮らしと仕事への影響と、今日からできること
S0系に乗れるのは2029年7月からの予定です。今の新幹線に乗るときに役立つことと、今から備えられることをまとめます。
- 大きな荷物の決まりを確かめる。3辺の合計が160cmまでの荷物は、荷棚や足元、デッキの荷物置場に置ける(予約は不要)。160cmを超え250cmまでの「特大荷物」は「特大荷物スペースつき座席」の予約が要る(追加の料金はなし)。予約せずに持ち込むと1,000円の手数料がかかり、250cmを超える荷物は持ち込めない
- ベビーカー・車いす・楽器・スポーツ用品は、大きさにかかわらず予約は要らない(3辺の合計250cmまで)。ただし、座席の後ろの特大荷物スペースを使えるのは、その座席を予約した人
- 車いすで乗る人は早めに申し込む。東海道新幹線は全列車に車いす対応座席があり、乗る日の1か月前の10時から申し込める。エクスプレス予約・スマートEX・LINEからEXでも予約できる
- 出張や帰省の費用を見込む。のぞみ・みずほの指定席は2027年7月1日の購入分から、グリーン車は2027年12月15日の乗車分から上がる
新しい車両はまだ先の話や。荷物と料金の決まりは、次の旅の前にいっぺん見といてな。