厚生労働省は2026年10月16日、給与をスマートフォンの決済サービスなどの口座で受け取る「賃金のデジタル払い」について、資金移動業者向けのガイドラインの改正案を公表しました。11月16日まで、意見を募っています。
改正案の中心は、事業者が用意する保証の決まりなどを見直して、事業者の負担を軽くすることです。口座の残高を100万円以下にする仕組みや、破綻したときに残高の全額を払う仕組みなど、受け取る人を守る決まりは続きます。改正案の中身と、受け取る人が確かめること、関西の相談先をまとめました(2026年10月17日に、厚生労働省の資料で確認)。
賃金のデジタル払いとは
賃金のデジタル払いは、給与を銀行口座ではなく、厚生労働大臣が指定した資金移動業者の口座で受け取る仕組みです。2022年11月に公布された労働基準法施行規則の改正で認められました。厚生労働省は、受け取り方の選択肢の一つで、希望しない人に強制してはいけないとしています。
厚生労働省の説明の注意点。デジタル払いは選択肢の一つで強制は禁止出典: 厚生労働省(引用)
2026年7月1日時点で、指定を受けた事業者は4社です(厚生労働省の一覧のとおり)。
| サービス |
事業者 |
指定日 |
受け入れの上限額 |
| PayPay給与受取 |
PayPay |
2024年8月9日 |
20万円 |
| COIN+(スタンダード) |
リクルートMUFGビジネス |
2024年12月13日 |
30万円 |
| 楽天ペイ給与受取 |
楽天Edy |
2025年3月19日 |
10万円 |
| au PAY 給与受取 |
auフィナンシャルサービス |
2025年4月4日 |
10万円 |
受け取る人を守る、今の決まり
ガイドラインは、指定を受ける事業者に、次のような仕組みを求めています。改正案でも、これらは続きます。
| 決まり |
中身(ガイドラインのとおり) |
| 残高は100万円まで |
受け入れの上限を100万円以下にするか、100万円を超えた分を、その日のうちに本人名義の銀行口座など(指定代替口座)へ送る |
| 破綻したとき |
民間の保証機関が、残高の全額を速やかに本人に払う |
| 不正に引き出されたとき |
本人に過失がなければ全額を補償する。過失があっても、一律に補償しない扱いは認めない。知らせる期限を設けるなら、少なくとも30日 |
| 払い出しの手数料 |
少なくとも毎月1回は、手数料なしで払い出せる |
| 使わないままの残高 |
最後にお金が動いた日から、少なくとも10年は払う |
改正案で変わること
新旧対照表で、主に変わる所は次のとおりです。
| 項目 |
今 |
改正案 |
| その日のうちに送る基準 |
残高が100万円を超えたら |
事業者が決めた受け入れの上限額を超えたら、上限額以下にする。上限額は事業者ごとに決める |
| 破綻したときの弁済 |
速やかに払う仕組み |
6営業日以内に残高の全額を払うための仕組みだと明記 |
| 保証の額 |
100万円に、口座の数の上限をかけた額 |
100万円(上限額を100万円より低くした場合はその額)に、口座の数の上限をかけた額。新しく開いた口座は、最初の入金までに保証を足す仕組みでもよい |
| 資金決済法の供託との関係 |
記載なし |
条件を満たす保証の契約を届け出れば、資金決済法で求められる履行保証金の供託の全部または一部をしなくてよい |
| 個人情報の取り扱いの認証 |
プライバシーマークかISMS認証 |
それらに準ずる認証でもよい |
| 10年払う決まり |
利用規約で定める例を記載 |
例に「民法の消滅時効(第166条第1項)を踏まえ」と書き加え |
同意をとるときに働く人へ説明する事項も、破綻のときは「口座残高全額」が払われる、と言葉を改めています。
e-Govの意見募集のページ。受付は2026年11月16日23時59分まで出典: 厚生労働省(e-Gov)(引用)
保証の額や供託の二重の負担が軽くなると、指定を受けようとする事業者が増え、選べるサービスが広がる可能性があります(編集部の見方)。一方で、受け取る人を守る決まりの水準は、改正案でも下がっていません。
受け取っている人・これから選ぶ人ができること
- 受け入れの上限額を確かめる。 4社の上限額は10万円から30万円です。超えた分は、登録した銀行口座などへその日のうちに送られます。
- 送るときの手数料を確かめる。 ガイドラインは、銀行口座などへ送るときに手数料をとるなら、事業者があらかじめ分かりやすく知らせるよう求めています。
- 登録する口座を確かめる。 送り先は、本人名義の銀行口座や証券総合口座に限られ、ほかの決済サービスの口座は登録できません。
- 「預金」ではないと知っておく。 厚生労働省は、資金移動業者の口座は支払いや送金に使うためのもので、使う見込みの額を受け取るよう案内しています。給与の一部だけをデジタル払いにし、残りを銀行口座で受け取ることもできます。
- 不正に引き出されたら、すぐ知らせる。 補償の条件に知らせる期限がある場合でも、少なくとも30日は確保されています。気づいたらすぐ事業者に連絡します。
- 意見を出す。 改正案への意見は、e-Govの意見募集のページから11月16日23時59分まで出せます。
大阪・関西で、困ったときの相談先
会社にデジタル払いを強制された、同意していないのに受け取り方を変えられた、といった職場の困りごとは、労働局の総合労働相談コーナーに相談できます。厚生労働省によると、あらゆる分野の労働問題を対象にしていて、予約は要らず、無料です。
| 府県 |
窓口 |
電話 |
| 大阪府 |
大阪労働局 総合労働相談コーナー |
06-7660-0072 |
| 京都府 |
京都労働局 総合労働相談コーナー |
075-241-3221 |
| 兵庫県 |
兵庫労働局 総合労働相談コーナー |
078-367-0850 |
| 奈良県 |
奈良労働局 総合労働相談コーナー |
0742-32-0202 |
| 和歌山県 |
和歌山労働局 総合労働相談コーナー |
073-488-1020 |
| 滋賀県 |
滋賀労働局 総合労働相談コーナー |
077-522-6648 |
各府県には、労働基準監督署などにも総合労働相談コーナーがあります(厚生労働省の一覧で確認できます)。アカウントや残高のことは、厚生労働省の一覧に載っている各事業者の問い合わせ先に聞きます。
覚えておきたいこと
- 厚生労働省は10月16日、賃金のデジタル払いの事業者向けガイドラインの改正案を公表。意見募集は11月16日まで。
- 残高100万円まで、破綻のときの全額の弁済、不正の補償、毎月1回の無料の払い出しなど、受け取る人の守りは続く。破綻のときは6営業日以内に全額を払う仕組みと明記。
- 変わるのは、保証の額の考え方や供託との関係など、事業者の負担に関わる所が中心。
- デジタル払いは選択肢の一つ。強制されたら、労働局の総合労働相談コーナーへ。
給料の受け取り方は、自分で選べるもんや。使うなら、上限と手数料だけは先に見といてな。