AIに関西弁で話しかけたら、どこまで通じるのか。方言の音声をAIに聞かせて標準語に訳させた研究では、20の方言のうち大阪は5位、奈良は10位、京言葉は15位でした。
同じ関西でも点はかなり違います。ただ、この順位を読むには注意が要ります。
20方言を並べると
研究は、日本語のAIモデル「Sarashina」を開発するSB Intuitionsのチームが、2026年3月の言語処理学会で発表しました。音声をそのまま受け取るAIに方言の音声を聞かせて標準語の文に訳させ、正解との近さをBLEUという指標で採点しています。音声の読み取りには、文字起こしで広く使われるWhisperを使いました。
方言の音声を標準語に訳す実験の順位。方言を学習させる前のモデルの点数作成: 編集部 / 出典: 西のITメディア編集部
大阪は59.49で、20方言の平均の48.89を超えました。奈良は50.47、京言葉は42.19です。
もっとも、この順位を方言の通じやすさと読むのは早計です。話者は全部で21人で、ほぼ1人が1つの方言を約250文ずつ読んだものです。同じ大阪でも、話す人が変われば点も変わるはずです。同じ会社の別の論文は測り方が違い、奈良は点の落ち方が大きい側に入りました。調べたのは研究用に作ったモデルで、市販のサービスではありません。発表も査読を経ていません。
それでも、大きな傾向は同じです。別の論文によると、試した4つのモデルはどれも方言で点が下がり、声で入れるとさらに下がりました。
怖いのは、否定が消えること
点数より気になるのは、間違い方です。論文が例に挙げた京言葉の文は「ほんで食材もたりひんかったんどす」でした。標準語なら「足りませんでした」です。ところが方言を学ばせていないモデルは、英語に訳すときに「食材も買った」という意味の文を出しました。足りなかった話が、買った話に変わっています。
論文の出力の比較。京都弁の例は「足りなかった」が「買った」になった出典: 三森俊祐ほか、言語処理学会第32回年次大会 表3(CC BY 4.0(著者による公開)。表の部分を切り抜き・縮小のみ・2026年11月6日確認)
同じことは議事録の製品でも起きます。音声認識のAmiVoiceを手がけるアドバンスト・メディアが、自社の議事録ソフトを試したコラムです(2021年公開)。「してへんねやったら一緒に確認しましょう」は「してやったら」に、「せや」は「シェア」になりました。「〜やけど」が「火傷」になる例も挙げています。
一方で、言葉は共通語のまま関西のアクセントで話した文は、ほぼ正しく文字になりました。同社は、音声認識はアクセントに比較的強く、言葉そのものが違うと弱いと説明します。
「〜へん」「〜ひん」は文の終わりの短い音です。消えても文の形は保たれるので、読み返しても気づきにくいと編集部はみています。
関西の職場でできること
議事録AIや音声入力を使う職場なら、次の3つで取り違えを減らせます。
- 決まったことは否定を確かめる。「せえへん」「あかん」が絡む所は、文字起こしと録音を突き合わせる。
- よく出る方言や社名を単語登録する。アドバンスト・メディアの例では、東北の「めんこい」は登録の前に「面子行こ」となり、登録のあとは正しく出ました。機能があるかは製品ごとに確認する。
- 導入の前に、自社の会議の録音で試す。製品の精度の数字が、方言で測ったものとは限りません。
会議の最後に、決めたことを標準語で言い直しておくのも手です。
役所の電話でも、同じ場面が増えそうです。西宮市は12月15日まで、市民課の電話でAIが24時間案内する実証をしています。話し言葉で用件を伝える仕組みなので、通じないときは短い標準語で言い直すと伝わりやすいかもしれません。
学ばせれば伸びるが、まだ途中
| 方言 |
学習の前→後 |
| 大阪 |
59.49→62.54 |
| 奈良 |
50.47→54.25 |
| 京言葉 |
42.19→46.66 |
| 20方言の平均 |
48.89→52.64 |
研究チームは、AIに標準語の文を方言へ書き換えさせ、それを音声にしたデータを学習に足しました。先ほどの京言葉の文は「足りなかった」と正しく訳せるようになっています。
ただ、金沢の「がめる」(取る)は学習のあとも訳せませんでした。論文は、方言の音声データが足りないことを差の主な原因に挙げています。AIと言葉の関係では、質問の言語で答えが変わる研究の記事も合わせてご覧いただけます。
AIの議事録を回す会議では、「せや」より「そうです」のほうが、今はまだ無難かもしれんな。