KDDIとKDDI総合研究所は2026年10月14日、複数のAIが基地局の設定を自律的に最適化する「分散型AI」を使い、混雑する時間帯に合わせて通信エリアを最適化する実証に成功したと発表しました。混雑するエリアの混雑時間帯で、上り(送信)の通信速度が平均約60%向上したとしています。
ふだん「通信が速い・遅い」と言うとき、多くの人が気にするのは下り(受信)の速さです。今回のポイントは、あまり意識されない上り(送信)の方です。何がどう変わるのか、暮らしの目線で見ていきます。
そもそも「上り」が速くなると、何がうれしいのか
スマホの通信には、データを受け取る「下り」と、送り出す「上り」があります。
- 下り(受信): 動画を見る、サイトを開く、アプリを使う。ふだん「速い・遅い」と感じるのは、だいたいこちらです。
- 上り(送信): 動画や写真をアップロードする、ライブ配信する、ビデオ通話やオンライン会議で自分の映像・音声を送る、SNSに投稿する。
これまで、通信の改善は下りが中心に語られがちでした。しかし、ライブ配信やビデオ通話、動画の投稿が当たり前になり、「送る側」の速さも大切になっています。KDDIは、AIや映像データの活用が広がる中で上り通信速度の重要性が高まっている、としています。
KDDIが公表した発表。分散型AIで混雑時の上り速度を平均60%向上出典: KDDI株式会社・KDDI総合研究所(引用)
分散型AIで何をしたのか
KDDIとKDDI総合研究所は、複数のAIが基地局の設定値を自律的に最適化する技術を「分散型AI」と呼んでいます。時間帯ごとに変わる混雑の状況に合わせて、通信エリアを自動で調整する仕組みです。2026年6月から8月にかけて、全国から選んだ100の混雑エリアで実証を行いました。
その結果、通信が混雑するエリアの混雑時間帯で、上り通信速度が平均約60%向上し、上りの速度が1.5Mbps以下だった低速度エリアの数を約30%削減できたとしています。両社は、この成果をもとに、分散型AIを2026年11月から全国の商用ネットワークへ順次導入し、2026年度中に本格稼働を始める予定です。
ひとつ、受け取り方で注意したい点があります。平均約60%向上という数字は、あくまで「混雑するエリアの、混雑する時間帯」での実証の結果です。すべての場所・すべての時間帯で、同じだけ速くなるという意味ではありません。
暮らしと仕事への影響
上りが速くなって効いてくるのは、「自分から送る」場面です。
- スマホで撮った動画や写真を、その場でアップロードする
- イベントやお出かけ先からライブ配信をする
- ビデオ通話やオンライン会議で、自分の映像をなめらかに送る
- SNSに、動画つきの投稿をする
とくに、人が集まって回線が混みやすい場所(駅、繁華街、イベント会場など)の、混む時間帯での改善をねらったものです。これまで「人が多いと、送るのに時間がかかる・止まる」と感じていた場面で、待たされにくくなることが期待できます。一方で、動画の見づらさなど「受け取る側(下り)」の体感が、これで直接良くなるわけではない点は、分けて考えておくとよいでしょう。
関西の暮らしでの使いどころ
関西でも、梅田や難波といった繁華街、大きな駅、人が集まるイベントやお祭りの会場では、回線が混みやすくなります。こうした場所で、スマホから動画を上げたり、家族や友だちとビデオ通話をつないだりする人にとっては、混雑時の上りの改善が体感につながりそうです。
たとえば、お出かけ先の子どもの様子を離れて暮らす祖父母にビデオ通話で見せる、現地から写真や短い動画をすぐに家族へ送る、といった場面です。本格的な導入はこれから(2026年11月以降、順次)なので、すぐに全員が速くなるわけではありませんが、「送る側」の通信が良くなっていく流れは、関西の暮らしにも関わってきます。