滋賀大学は2026年10月13日、帝国データバンクと共同で置いている「DEMLセンター」が、業種別の倒産件数の予測レポートを公開したと知らせました。機械学習(たくさんのデータから、数字の動きの決まりを見つける技術)を使って、2026年7〜9月期と10〜12月期の倒産件数を、5つの業種ごとに予測したものです。レポートの日付は10月9日です。
DEMLは、Data Engineering and Machine Learning の略です。大学のお知らせによると、企業データを扱う技術を持つ帝国データバンクと、機械学習やデータサイエンスの研究・教育を進める滋賀大学が組んだ、産学連携の拠点です。
5つの業種の予測
レポートの「予測結果」から、数字を抜き出しました。件数は小数点以下を四捨五入しています。かっこの中は、95%予測区間(このあたりに収まると見込む幅)です。
| 業種 |
2026年4〜6月期(実績) |
7〜9月期(予測) |
10〜12月期(予測) |
| サービス業 |
693件 |
652件(577〜727件) |
680件(586〜775件) |
| 卸売業 |
299件 |
289件(235〜343件) |
278件(211〜346件) |
| 小売業 |
335件 |
271件(243〜300件) |
273件(243〜303件) |
| 建設業 |
536件 |
459件(380〜538件) |
470件(358〜583件) |
| 製造業 |
295件 |
254件(198〜311件) |
273件(201〜346件) |
DEMLセンターのページ。サービス業の実績と予測、予測区間の表出典: 滋賀大学×帝国データバンク DEMLセンター「倒産件数予測レポート 2026年Q3・2026年Q4」(引用)
DEMLセンターのページの表は、サービス業の数字です。見出しに「'25-Q1」とある列は、レポートの本体では2026年1〜3月期の実績になっています。
レポートが業種ごとに書いている見通しは、次のとおりです。
- サービス業: 現在と同じ水準で推移する。7〜9月期にいったん減り、10〜12月期にやや持ち直す
- 卸売業: ゆるやかに減る。7〜9月期も10〜12月期も、直近の実績を下回る
- 小売業: 短期的に減ったあと、低い水準にとどまる
- 建設業: 短期的に減ったあと、低い水準にとどまる
- 製造業: 短期的に減ったあと、現在の水準に向けて持ち直す。10〜12月期も、直近の実績より少し低い
直近の件数について、レポートは、全体としてはおおむね安定していると書いています。そのうえで、サービス業と建設業はコロナ禍の前を上回る水準、卸売業・小売業・製造業はコロナ禍の前と同じくらいか低い水準だとしています。
数字の読み方
予測値は、1つの数字ではなく、幅と一緒に読みます。たとえば建設業の10〜12月期は、予測値は470件ですが、幅は358〜583件です。上の端は、4〜6月期の実績(536件)より多くなっています。「減る」と決まったわけではありません。
ここでいう倒産は、帝国データバンクの倒産の定義のうち、法律にもとづく手続き(レポートは「倒産4法」と書いています)によるものです。
何が予測に効いているかも、レポートは調べています。複数の業種で、貸出や借入など、お金の調達に関する指標が予測値に強く反映されていました。業種ごとの読み取りの例です。
- サービス業: 短期の借入金など、資金繰りの指標が強く反映されている
- 卸売業: 仕入れから販売までの運転資金が要る業種で、短期の借入の指標が選ばれている
- 小売業・建設業: 長期の借入金や、設備に関する指標が強く反映されている
- 製造業: 非正規の社員の数や、輸入の数量など、雇用と貿易の指標が大きく効いている
ただし、レポートは注意書きを付けています。この読み取りは、予測モデルの中での変数どうしの関係と、予測値への寄与にもとづくもので、統計的に意味のある因果関係を示すものではない、という内容です。「借入が減ったから倒産が増える」と言い切れる話ではありません。
どうやって予測しているか
レポートの「モデル概要」によると、流れは次のとおりです。
- 帝国データバンクのデータと、政府・公的機関のマクロの統計を集める
- それぞれの指標から、過去の値や、前の期・前の年からの変化などを作る
- 似た動きをする指標をまとめて、候補を減らす
- いくつもの期間で安定して選ばれる指標を、業種ごとに選ぶ(今回は上位6つを候補にしています)
- 選んだ指標で式を作り直し、1つ先と2つ先の四半期の件数を出す
学習に使ったのは、2012年4〜6月期から2024年4〜6月期のデータです。コロナ禍の影響が特に強い2020年4〜6月期は外しています。
今回のレポートから、指標の選び方を変えたとも書かれています。これまでは四半期ごとに機械的に選び直していましたが、今回からは、複数の時点で安定して選ばれる指標を使います。予測の正確さを保ちながら、何が効いているかを説明しやすくするためです。
レポートの著者は、滋賀大学のデータサイエンス研究科の2人と、同大学のデータサイエンス・AIイノベーション研究推進センターの1人です。
大阪・関西では
滋賀大学は、滋賀県の国立大学です。帝国データバンクとの共同の拠点で、会社のデータを使った研究が続けられていて、今回のような予測のレポートが公開されています。関西の大学発の取り組みとして、数字を追いかける価値があります。
一方で、このレポートに、関西だけの数字はありません。載っているのは業種ごとの件数で、地域ごとの内訳は出ていません。「関西の倒産が減る・増える」とは読めない点に、気をつけてください。
今日からできること
- 自分の会社や勤め先の業種の行を、予測値だけでなく幅ごと読む
- 取引先に多い業種の行も見る。サービス業と建設業は、コロナ禍の前を上回る水準が続いているとされています
- 予測は、決まった未来ではありません。この数字だけで、取引や借入を決めない
- データの分析に関心がある人は、公開されている「モデル概要」を読んでみる。どの指標を候補にして、どう選んだかが、21ページで説明されています
次の予測が出たら、今回の予測値と実際の件数を見比べると、予測の当たり具合が分かります。
ほな、数字は幅ごと読んで、決めつけんと使うてな。