広告やチラシの画像を、生成AIで作ることが増えています。そこで気になるのが、出来上がった画像が、だれかの作品にたまたま似てしまっていないかという点です。博報堂は2026年10月19日、こうした確認を手伝う「画像類似度チェッカー」を、クライアント企業向けに提供し始めると発表しました。
何を比べる道具か
博報堂の発表によると、このツールは調べたい画像をもとに、ウェブ上の似た画像を検索します。似ている度合いが高い画像を自動で見つけて表示し、「意味」や「構造」など複数の観点から類似度を点数で示します。
博報堂の10月19日の発表資料。検索結果の画面のイメージつき出典: 株式会社博報堂(引用)
主なしくみは次のとおりです。
- 画像の特徴を生成AIで読み取り、関連するキーワードを自動で作って、似た画像を探しやすくする
- 複数のアルゴリズムで類似度を判定し、結果を一覧で見られる
- 検索結果や判定の内容を、レポートとして出力できる
- 「だれが・いつ・どの画像を調べ・どんな判定だったか」を監査ログとして残せる
発表資料の画面のイメージでは、ひとつの画像に「意味的類似度」と「構造的類似度」の2つの点数が並んでいます。
だれが使えるのか、いつから
提供先は博報堂の「クライアント企業」、つまり広告の仕事を依頼する企業です。このツールは、もともと博報堂DYグループの中で、生成AIを使った広告の制作物を確かめるために使ってきたものです。クライアント企業からも同じ確認を効率よくしたいという声があり、外にも提供することにしたとしています。
企業向けにするにあたって、SSO(シングルサインオン)などの認証の機能や、使った記録を残す監査ログの機能を強めました。
発表は「提供開始します」と書いていますが、具体的な開始日、料金、申し込みの方法、どんな形で使うのかは書かれていません。広告の制作会社が単独で使えるかどうかも、発表からは分かりません。
さかのぼると、博報堂DYホールディングスは2024年12月、プライバシーの技術を持つAcompanyと共同でこのツールを開発したと発表していました。当時は社内での利用を目的としていました。Googleの画像検索の機能とあわせて検索すること、画像の一部を切り出して調べる機能、一定の基準を上回る画像を目立たせる機能をあげていました。
精度と限界: 「侵害かどうか」は判定しない
博報堂は、生成AIで関連キーワードを作ることで「高精度の類似画像検索を実現」と説明しています。ただ、どのくらいの精度なのかを示す数値は、発表には書かれていません。
発表資料の2ページ目。最後に「著作権侵害の成否を判定するものではない」との注意書き出典: 株式会社博報堂(引用)
大事なのは、発表の最後の注意書きです。このツールは既存の画像との類似性を確かめるための支援ツールで、著作権侵害の成否を判定するものではないとしています。最終的な権利の判断は、使う企業が行う前提です。
発表の本文には「著作権侵害リスクを自動判定する」という言い方もあります。ただ、注意書きと合わせて読むと、点数は似ている画像を見つけて人が確かめるための手がかりで、法的な判断そのものではありません。また、比べる相手はウェブで検索して見つかった画像です。ウェブで見つからない作品まで比べられるかどうかは、発表に書かれていません。
著作権の考え方: 似ているだけでは決まらない
文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」の概要によると、AIで作った画像を公表したり売ったりする場合は、ふつうの著作権侵害と同じ基準で判断されます。既存の作品との「類似性」(創作的な表現が共通していること)と「依拠性」(既存の作品をもとに作ったこと)の両方が認められ、例外として認められている使い方にも当たらない場合に、侵害になります。
類似度の点数は、このうち「似ているか」を見る手がかりになります。一方で「もとにしたか」は別に考える必要があります。文化庁の概要では、生成AIの学習に既存の作品が使われていた場合、使った人がその作品を知らなくても、通常は依拠性があったと推認されるとしています。
作風のようなアイデアは著作権で守られないため、作風が似ているだけでは侵害になりません。ただ、特定のクリエイターの作品に共通する表現をわざと出させるような使い方では、生成したものの利用が侵害になり得るとしています。
権利者が認めた範囲でAIの二次創作を楽しむ仕組みについては、原作者が認めたマンガだけAIで二次創作 LINEマンガbyUsの注意点で取り上げました。
暮らしと仕事への影響
大きな広告主が、こうした道具で確認の記録を残すようになると、生成AIを使った広告でも「どう確かめたか」を説明できることが大切になっていきます。私たちが目にする広告の画像にも、裏側でこうした確認が入ることになります。
小さな会社や店、個人事業主も、チラシやSNSの画像を生成AIで作ることがあります。この道具を直接使えなくても、確かめる手順の考え方は同じです。似た画像を探す、記録を残す、最後は人が判断する、の3つです。
今日からできること
- 使う前に似た画像を探す: 生成した画像を、ふだん使っている画像検索にかけて、よく似た作品がないかを見ます。
- 作品名や作家名を指示に入れない: 特定の作品やクリエイターに似せる指示は避けます。文化庁の考え方では、特定のクリエイターの表現をわざと出させる使い方は侵害になり得ます。
- 記録を残す: 使った生成AIのサービス名、指示(プロンプト)、作った日、確かめた内容をメモしておきます。
- 似ていたら使わない: よく似た作品が見つかったら、作り直すか、別の画像にします。判断に迷うときは、弁護士などの専門家に相談します。
- 文化庁の資料を読む: 文化庁の「AIと著作権について」のページに、考え方の概要や、立場ごとのチェックリスト&ガイダンスがまとまっています。
関西の暮らしと仕事での使いどころ
関西の企業や自治体がこのツールを使うといった話は、発表に書かれていません。ここでは、関西で暮らす人や働く人の使い方の例として整理します。
たとえば、大阪の商店街のお店が、秋のセールのチラシの絵を生成AIで作る場合です。出来上がった絵を画像検索にかけ、有名なキャラクターや人気のイラストに似ていないかを見てから印刷に回します。神戸の小さな会社が採用のSNSに載せる画像を作るときも、使ったサービスと指示、作った日をメモしておけば、あとで聞かれたときに説明できます。