工作機械のメーカーのDMG森精機は2026年10月19日、利用者向けのサイト「my DMG MORI」で、生成AIを使う新しい機能「サービスエージェント」の提供を始めました。機械に不具合が起きたとき、AIとの会話で状況を整理し、その場で試せる解決策と、修理を頼む問い合わせの内容をまとめて用意します。工場の保全の仕事がどう変わるのかを整理します。
何が始まった? 不具合の初動をAIとの会話で整理
DMG森精機によると、サービスエージェントは「保全担当者のサポートAI」です。my DMG MORIに載っているマニュアルと、同社の修理や保守を担うエンジニアの知見を使って答えます。
これまでもmy DMG MORIでは、機械のマニュアルや電気の図面、過去の修理や部品の購入の履歴を見られました。画像や動画を付けて修理を頼む「サービスリクエスト」の機能もありました。今回の機能は、そこに会話で答えるAIを加えたものです。
同社は、背景として次の点を挙げています。
- 自動化が進んだ工場では、夜間や休日の連続運転中に起きた不具合に、どれだけ早く手を付けられるかが生産の計画を左右する
- 保全に詳しい人を確保するのが、多くの利用者にとって課題になっている
- 情報の多いマニュアルから、必要なところを探し出すのに時間がかかることがある
3つの機能
- マニュアルの検索: 操作のしかたやプログラム、使える油の種類などをチャットに書くと、my DMG MORIで公開しているマニュアルをAIが探し、その内容をもとに答えます。
マニュアルの検索の画面の例(画面はイメージ)出典: DMG森精機株式会社(報道用の素材)
- 不具合の診断と問い合わせの自動作成: エンジニアの知見を反映した確認項目と答えの候補が出ます。当てはまるものを選んでいくと、アラームのメッセージ、起きた時期、頻度、繰り返し起きるかといった情報が整理されます。会話の内容をもとに、問い合わせの文もAIが作ります。
- 解決策の提示: 整理した不具合の内容を分析し、マニュアルにもとづく解決策を示します。
解決策と、自動で作られた問い合わせの内容の画面の例(画面はイメージ)出典: DMG森精機株式会社(報道用の素材)
発表の画面の例では、エアの圧力が下がったことを示すアラームについて、考えられる原因と、フィルターの確認などの対処の手順が並んでいます。手順の前には「作業にあたっては、必ず主電源を切り安全を確認してから行ってください」との注意が出ています。入力欄の下には、個人情報や機密情報を入力しないこと、AIの回答は参考情報で正確さを保証しないことも書かれています。
会話が終わると、その場で試せる解決策と、サービスリクエストに必要な問い合わせの内容が同時に用意されます。利用者は同社からの連絡を待たずに解決策を試せます。直らなければ、作られた問い合わせをそのまま送れます。同社は、最初の連絡から必要な情報がそろうので、状況を確かめるやりとりが減り、復旧までの時間が短くなるとしています。
使える条件とデータの扱い
使うには、my DMG MORIのアカウントの登録が要ります。登録されている全ての機種・機番で使えるとしています。ただし、マニュアルの検索と解決策の提示は、日本で生産した機械で、my DMG MORIの保有機の画面にマニュアルが載っている場合に限られます。見られるマニュアルの範囲も機番によって違います。料金は、発表に書かれていません。
AIは、Microsoft Azureで使える大規模言語モデルを使います。処理は全て日本国内で行い、データが海外のサーバーに渡ることはないとしています。入力した内容はAIの学習には使わないものの、サービスの品質の向上に使うことがあるとしています。
今後は、my DMG MORIや稼働を見守るソフトにたまる情報に加え、経済産業省とNEDOが進める生成AIの開発支援の事業「GENIAC」で集める診断のデータを使い、アラームが出たときの自動の診断に広げる予定です。DMG森精機は7月にGENIACに採択されたと発表しており、協力企業約100社の約1,000台の設備からデータを集める計画を示しています。
工場の仕事への影響
止まった機械の前で、分厚いマニュアルをめくりながらメーカーからの連絡を待つ時間は、工場にとって痛い時間です。夜間や休日に無人で動かしている工場なら、なおさらです。選ぶだけで状況が整理され、試せる手順が出てくれば、保全に慣れていない人でも最初の一手を早く打てます。
修理を頼む側にとっては、問い合わせの文を書く手間が減ります。アラームの番号や起きた時期をきちんと伝えられれば、メーカーの側も聞き返しが減り、部品の手配や訪問の段取りが早くなります。
一方で、解決策を試すのは現場の人です。工作機械は、刃物が高速で回り、重い部品が動く機械です。AIが示した手順でも、マニュアルの安全上の注意と社内の決まりを守り、分からないところは試さずにメーカーに頼む線引きが要ります。
ベテランの保全担当が辞めたり引退したりすると、「このアラームのときはまずここを見る」という知恵が工場から消えがちです。メーカーのエンジニアの知見を反映した確認項目は、その穴を埋める手がかりになります。ただ、自社の機械のくせや過去の直し方は、自社で書き残しておく必要があります。
使う前に確かめること
- 自社の機械が対象かを見る: my DMG MORIに登録されているか、マニュアルが載っているか、日本で生産した機械かを確かめます。
- 料金と契約を確かめる: 発表に書かれていないので、DMG森精機の窓口に聞きます。
- 入力してよい情報を決める: 学習には使わないとしていますが、品質の向上には使われることがあります。図面や取引先の名前など、社外に出したくない情報を書かない決まりを作ります。
- 試してよい範囲を決める: AIの解決策のうち、現場で試してよい作業と、メーカーに任せる作業を分けておきます。
- 自社の直し方を書き残す: AIで解決した例と、そうでない例を記録し、次の担当者に引き継ぎます。
大阪・関西では
DMG森精機の拠点情報によると、同社は奈良市に第二本社の「奈良商品開発センタ」を、奈良県大和郡山市に生産拠点の「奈良事業所」を置いています。三重県伊賀市にも生産拠点の伊賀事業所と部品の拠点があります。
関西には、金属を削って部品を作る中小の工場が多くあります。たとえば、夜間に無人で機械を動かしている大阪の工場なら、朝に止まっていた機械の状況を出社した人がAIと整理し、試せる手順を見てから、必要なときだけメーカーに連絡する流れが考えられます。保全の担当が1人しかいない工場では、その人が休みの日の備えにもなります。
工場でAIを使うときの考え方は、大阪のフツパーのフツパー、11月12日に無料オンライン会議 工場AIの導入後を学ぶでも紹介しています。
止まった機械の前で慌てんでええように、使えるかどうか先に確かめとこな。