デジタル庁の「今後のデジタル人材育成政策に関する検討会」が、2026年10月20日に第2回を開きます。デジタル庁は、会議の資料を先に公開しました。国が掲げてきたデジタル人材の育成の目標を見直し、これからは「人数」より「中身」を問う方向で話し合っています。資料では、ITパスポートなどの国家試験の区分を2027年度から見直す案も示されました。
何を話し合っている? 人数から中身へ
第2回は10月20日の10時30分からオンラインで開き、文部科学省、厚生労働省、経済産業省と情報処理推進機構(IPA)が、それぞれの取り組みを説明する予定です。議事の概要は後日載せるとしています。
デジタル庁の検討会(第2回)のページ出典: デジタル庁(引用)
9月9日の第1回の主な意見をまとめた資料では、デジタル人材230万人の育成目標は達成したものの、成果の質の評価は足りないとしています。今後は、受講した人数や資格を取った人数だけでなく、育った人が生み出す変革や新しい取り組みを重く見る必要があるという意見です。
ほかにも、次のような意見が並んでいます。
- AIの時代には、業務を理解し、組織や事業の変革を引っ張る力が大切
- 技術の知識に加え、問いを立てる力、論理的に考える力、言葉にする力も重視すべき
- スキルや資格を見える形にするだけでなく、給料や配置、仕事の経験に結びつける
- 地方や自治体の人手不足も踏まえ、学び直しの成果を仕事につなげる仕組みを強める
今後は、11月17日の第3回でAIやサイバーセキュリティの課題を聞き、12月15日の第4回で議論を整理する予定です。年明けに2回ほど開き、2月から3月ごろに取りまとめます。
IT国家試験は2027年度に区分を見直す案
経済産業省とIPAの資料によると、情報処理技術者試験は年77万人が応募する国内最大級の国家試験です。2025年度の合格者は25.5万人で、そのうちITパスポート試験が13.2万人でした。
資料では、特定の職種を目指す今の試験の区分を見直し、AIも使って新しい価値を生む人が目標にできる区分にする案を示しています。2027年度の開始をめざしています。
経済産業省とIPAが示した情報処理技術者試験の見直しの案出典: 経済産業省・情報処理推進機構(デジタル庁の検討会の資料5)(引用)
案の主な中身は次のとおりです。
- データマネジメント試験(案)を新しく設ける
- 高度な試験を大きくまとめ、マネジメント、データ・AI、システムの3つの領域に組み替える
- 基本情報技術者試験やITパスポート試験などに、マインド・スタンス(意識や姿勢)などの出題を加える
- 論述式の試験のあり方は、2028年度以降に向けて検討を続ける
あくまで検討の段階で、試験の名前や中身は決まっていません。いま勉強している人は、IPAの公式の案内で、受ける回の試験の内容を確かめるのが確実です。
学び直しに使える国の仕組み
講座を探せる「マナビDX」
経済産業省とIPAのポータルサイト「マナビDX(デラックス)」では、民間や大学のデジタルの講座を、国のデジタルスキル標準に合わせて探せます。資料では、約360社・約780講座が載っています。そのうち、経済産業大臣が認定したReスキル講座が357講座、厚生労働省の助成の対象の講座が272講座です。
一定のレベル以上の認定講座は、厚生労働省の要件を満たせば、個人向けの専門実践教育訓練給付や、会社向けの人材開発支援助成金の対象になるとしています。
ケーススタディの教材で受講生どうしが学び合う「マナビDXクエスト」もあります。年2,800人ほどの規模で、修了した人を中心に、地域の中小企業と一緒に課題に取り組むプログラム(年300人ほど)も開いています。
会社向けの人材開発支援助成金
厚生労働省の資料によると、人材開発支援助成金は、会社が雇っている人に、仕事に関係する訓練を計画どおりに受けさせたときに、訓練の費用や訓練中の賃金の一部を助成する仕組みです。デジタルに関係する主なコースは次のとおりです。
- 事業展開等リスキリング支援コース: 新しい事業やDX・GXに向けた訓練。費用の75%(中小企業以外は60%)、賃金は1人1時間1,000円(同500円)
- 人への投資促進コースの高度デジタル人材訓練: 費用の75%(同60%)、賃金は1人1時間1,000円(同500円)
- 人への投資促進コースの定額制訓練(サブスクリプション型の研修): 費用の60%(同45%)。賃金を上げるなどの条件を満たすと75%(同60%)
このうち人への投資促進コースと事業展開等リスキリング支援コースは、令和8年度末(2027年3月末)までの時限措置です。申請できるのは雇用保険の適用事業主で、細かな条件は厚生労働省の案内で確かめる必要があります。
暮らしと仕事への影響
国家試験の区分が変われば、就職や転職でアピールする資格の名前や、会社が社員に勧める資格も変わる可能性があります。ITパスポート試験は残る案ですが、出題の中身が変わるかもしれません。
また、検討会では資格を取った人数よりも、仕事でどう生かせたかを重く見る方向です。学び直しをするなら、資格の取得だけでなく、職場で使える形にすることが大事になりそうです。
今日からできること
- 受験を考えている人は、IPAの公式サイトで、受ける回の試験の内容と日程を確かめる
- 学び直しの講座を探す人は、マナビDXで自分の仕事に近いスキルの講座を探す
- 社員の研修を考えている会社は、人材開発支援助成金の対象になるかを、厚生労働省や都道府県の労働局の案内で確かめる。時限措置のコースは2027年3月末までなので早めに
- 検討会の取りまとめ(2〜3月ごろの予定)が出たら、試験や支援策がどう変わるかを確かめる
関西の暮らしと仕事での使いどころ
関西についての話は、資料には出てきません。ここでは、関西で暮らし働く人の使い方の例として整理します。
たとえば、東大阪や堺の町工場で、紙の図面や受注の管理をデジタルに移したいなら、社員の研修に人材開発支援助成金が使えるかを先に確かめておけます。資料には、樹脂の加工業者で図面から見積もりを自動で作るAIの例や、小売業で販売データを見える形にした例が紹介されています。
就職活動中の学生なら、ITパスポートを2027年度より前に取るか、新しい区分を待つかを考える材料になります。どちらにしても、試験の正式な発表はIPAの案内で確かめてください。
関西の働き方とデジタルの関係は、関西の地方銀行5行を図解 有価証券報告書で見る平均年収・DX・サイバーのリスクでも取り上げています。
資格を取るのもええけど、職場で使えるとこまで持っていこな。