欧州委員会は2026年10月19日、EUのAI法を支える初めての「整合規格」を、EUの官報に載せたと発表しました。高リスクのAIを提供する会社の品質管理の規格です。欧州に製品やサービスを出す日本の会社にも関わるため、中身と時期を整理します。
何が決まった? 初の整合規格「EN 18286」
官報に載ったのは「EN 18286:2026 人工知能 EU AI法の規制のための品質管理システム」です。欧州の標準化団体のCENとCENELECが作りました。欧州委員会の実施決定(EU)2026/2274で、官報に名前が載りました。
この規格は、高リスクのAIシステムを提供する会社が、AI法第17条の品質管理の要件を満たすための道筋を示すものです。規格に沿った会社は、規格が扱う範囲で第17条の要件に合っているとみなされます。
欧州委員会が10月19日に出した、初の整合規格の官報掲載の発表出典: European Commission(欧州委員会)(引用)
欧州委員会は、この規格の特徴を次のように説明しています。
- AIの品質管理の規格で、要件に合っているとみなされるのは今のところこれだけ
- 会社の組織ではなく、AIシステムの一生(作る、出す、見守る)に沿って組み立てている
- ISO/IEC 42001やISO 9001、医療機器のISO 13485など、すでにある品質管理の規格に上乗せして使う作りで、置き換えるものではない
- ISO/IEC 42001を持っていない会社も、今の品質管理を広げる形で使える
整合規格とは 使えば「法律に合っている」とみなされる
整合規格は、法律の要件を技術の言葉に置き換えた欧州の規格です。欧州委員会によると、使うかどうかは任意で、ほかの方法で法律に合っていることを示してもかまいません。ただ、官報に載った整合規格に沿えば、法律の要件に合っているとみなされ、会社にとって見通しが立ちやすくなります。
欧州委員会はCENとCENELECに、10の分野で規格づくりを頼んでいます。リスク管理、データの品質、記録、透明性、人による監督、正確さ、頑健さ、サイバーセキュリティ、品質管理、適合性の評価です。今回の品質管理は、その最初の1本です。ほかの整合規格も続く見込みだとしています。
第17条の品質管理で求められること
AI法第17条は、高リスクのAIを提供する会社に、品質管理の仕組みを文書にして持つよう求めています。最低限そろえる項目には、たとえば次のものがあります。
- 法律に合わせるための方針と、AIを変えたときの手続き
- 設計、開発、品質の確認のやり方
- 作る前・作っている間・作った後のテストと検証
- データの集め方、ラベル付け、保存などの管理
- 売った後の見守りと、重大な事故の報告の手順
- 担当者と経営陣の責任の分け方
仕組みの重さは会社の規模に合わせてよく、中小企業やスタートアップへの配慮も条文に書かれています。
いつから? 高リスクのAIの決まりの時期
欧州委員会によると、AI法の見直し(AI Omnibus)の政治合意を受けて、高リスクのAIの決まりの時期は次のようになりました。
- 生体認証、重要インフラ、教育、雇用、移民・難民・国境管理などの分野で使うAI: 2027年12月2日から
- ロボットや産業機械などの製品に組み込むAI: 2028年8月2日から
高リスクのAIの決まりが始まる時期を示す欧州委員会のページ出典: European Commission(欧州委員会)(引用)
なお、人をだますように操るAIや社会的な点数づけなど、禁止されたAIの使い方(9つのうち8つ)は、2025年2月から効力を持っています。
暮らしと仕事への影響
AI法は、EUの市場でAIシステムを売ったり使い始めたりする提供者に、EUの中の会社か外の会社かを問わずかかります。AIを組み込んだ製品をEUで売るメーカーにもかかります。日本の会社でも、EUに高リスクのAIを出すなら、品質管理の仕組みが要ることになります。
働く人の目線では、採用や教育で使うAIが高リスクの分野に入っている点が身近です。EUで採用の書類選考にAIを使う場合などは、提供する側に重い決まりがかかります。
日本の国のAIのルールの考え方は、国のAIのルールは暮らしと仕事にどう関わる? AI法と基本計画の要点で整理しています。EUのAI法は、日本の法律とは別の、EUで売るときの決まりです。
欧州に製品を出す会社が今日からできること
- 自社の製品やサービスのうち、EUで売っていて、AIを使っているものを書き出す
- それが高リスクに当たるかを、欧州委員会の高リスクのガイドライン(案)や、AI Act Service Deskで確かめる
- すでにISO 9001やISO 13485などの品質管理があるなら、EN 18286を上乗せする形で足りない所を洗い出す
- 時期を手帳に書いておく: 雇用や教育などの分野は2027年12月2日、機械などに組み込むAIは2028年8月2日
関西の暮らしと仕事での使いどころ
関西の会社や自治体がこの規格について発表したわけではありません。ここでは、関西で働く人の使い方の例として整理します。
たとえば、ロボットや工作機械、医療機器の部品をつくり、欧州にも製品を出している会社なら、自社の製品にAIの機能が入っているかを、営業と品質管理の担当で一度確かめておけます。機械に組み込むAIは2028年8月2日からなので、次の製品の設計の段階から品質管理の書類を考えておく時間があります。
欧州のメーカーに部品を納めている会社なら、取引先が高リスクのAIの提供者にあたるかどうかで、求められる書類が変わるかもしれません。どんな資料が要りそうか、取引先に早めに聞いておくのも一つの手です。
欧州に売る予定のある会社は、2028年の日付だけでも覚えといてな。