大阪大学などが共同開発した対話ロボットについて、精神科デイケアでの24か月間の実証をまとめた論文が、2026年10月22日(日本時間)にオンライン公開されました。患者が自分の状況や考えを整理する支援を目指し、開発途中で助言機能を外して、評価せずに話を聴く設計へ変更した点が特徴です。
答えを出すより、話し終わるのを待つ
ロボットは、沈黙しただけでは発話が終わったと判断しません。利用者が「以上です」と合図するのを待ちます。思考の癖を推定して助言する機能は開発途中で取り除き、利用者の話を聴くことに重点を置きました。
話題は、悩みや後悔に関する3つと、目標や楽しい思い出に関する2つから利用者が選びます。臨床家が緊急停止し、本人の意思と状態を確認してから対話を再開する仕組みも設けました。
24か月のうち、前半14か月は改良、後半10か月は完成したシステムの評価に充てました。評価実験は後半のうち10日間に実施し、49回の対話を分析しています。
暮らしと仕事への影響
研究チームによると、対話前後に0〜100点で自己申告した評価では、「調子の良さ」が平均4.9点、「意識のはっきりさ」が平均7.3点上がりました。いずれも統計的に差があると判断されました。一方、「気分の明るさ」は平均2.9点上がったものの、統計的な差は確認されませんでした。
患者や家族にとって大切なのは、この結果が対話直後の自己評価だという点です。病気の改善や治療の代替を示す結果として読むのではなく、話を整理する支援の研究として捉える必要があります。
49回中40回は操作者の介入なしで終了しました。残る9回では発話終了の検出を補助しています。緊急停止はありませんでしたが、人の支援が不要になったという結果ではありません。現場での運用を考える際には、会話の内容だけでなく、人がどこで支えるかも注目点です。
大阪・関西では
共同開発にはATR、長崎大学、大阪大学、奈良先端科学技術大学院大学、京都大学が参加しました。実証場所は、社会医療法人 寿栄会 ありまこうげんホスピタルの精神科デイケア「桜の咲く丘」です。
改良には利用者に加え、作業療法士、看護師、精神科医、臨床心理士の意見を反映しました。研究チームは現場での観察を通じ、質問の簡潔さや傾聴姿勢など、5つの設計原則をまとめています。