JR西日本は、駅のカメラで磨いたAIカメラ「mitococa Edge(ミトコカエッジ)」を、段ボールなどをつくるレンゴー(本社・大阪市北区)の工場の安全対策に使った事例を公開しています。搬送装置やロボットが動く場所に人が入ると、AIが見つけて機械を自動で止めたり、知らせたりします。どんな仕組みか、工場で働く人にとって何が変わるのかをまとめます。
何をしている? 人が入ったら機械を止める
JR西日本が技術の提供や共同の取り組みを紹介するサイト「JRW Innovation platform」で、2025年9月に公開し、2026年3月に更新した導入事例によると、取り組みは次のとおりです。
- 心配していたこと: 搬送装置や搬送ロボットが動く場所での、作業する人の「挟まれ・巻き込まれ・衝突」
- 使ったもの: JR西日本が自社で開発したAIカメラ「mitococa Edge」を試しに導入
- 仕組み: カメラが危ない場所に人が入ったのを見つけると、その信号で設備を自動で止めたり、知らせたりする
- 学び直し: 工場で集めた映像でAIを学び直させ、レンゴーの現場に合わせた専用のモデルを作った
JR西日本の導入事例のページ(2025年9月19日公開)出典: 西日本旅客鉄道株式会社(引用)
レンゴーは、AIカメラを入れようと検討していたものの、市販の製品は見つける精度や設定の柔軟さが足りず、現場の作業に合わせて使うのが難しかったとしています。学び直しのあと、見間違いや見落としが大きく減り、人を見つける精度も上がったといいます。
事例は、人の注意に頼らずに安全を高める仕組みを取り入れたとしています。レンゴーは、この成果をもとに、ほかの拠点での活用も視野に入れているとしています。どの工場で使っているかは、事例に書かれていません。
JR西日本のAIカメラとは
製品のページによると、mitococa Edgeは、JR西日本が駅で使ってきたAIカメラを製品にしたものです。
- 学習のもと: 1日に約500万人を映す、約7,500台の駅のカメラの映像
- 見つけられること: 危ない場所への立ち入り、混雑、同じ場所にとどまること(体調不良で倒れた人など)、人数を数えること
- 見間違いを抑える工夫: 画面の一部を隠す、見つける大きさや目安を調整する
- 構成: カメラ本体にAIを載せ、見つけたときの画像の保存や、記録の書き出しもできる
暮らしと仕事への影響
工場では、機械の非常停止のボタンを押す、電源を切るといった安全の手順を、最後は人が行います。今回の事例は、人が危ない場所に入ったことをカメラが見つけ、機械の側で止まる仕組みを加えるものです。
働く人にとっては、うっかり危ない場所に近づいたときの備えが一つ増えます。一方で、職場にカメラが増えることにもなります。JR西日本の事例と製品のページには、従業員の映像の扱いやプライバシーへの配慮についての説明は書かれていません。
今日からできること
- 自分の職場の「危ない場所」を確かめる: 搬送装置やロボットの近くなど、挟まれや巻き込まれのおそれがある場所と、そこでの決まりを確かめます。
- カメラの目的と映像の扱いをたずねる: 職場に見守りのカメラが入るときは、何のために使い、映像をどれだけ残すのかを会社に確かめます。
- 機械に頼りきらない: カメラや機械の止まる仕組みがあっても、いつもの安全の手順は続けます。
大阪・関西では
レンゴーもJR西日本も、大阪市北区に本社を置く会社です。鉄道の会社が駅で磨いたAIの技術を、関西のものづくりの会社の工場の安全に生かした例になります。
関西の工場では、ほかの方法での見守りも進んでいます。キリンビールとユビテックは2021年、キリンビール神戸工場などで、従業員がスマートウオッチを着けて脈拍などを集め、転倒や熱中症の兆しを見つける見守りのサービス「Work Mate」の実証実験を始めました。キリングループは、それより前の2019年に、キリンビバレッジ滋賀工場で全従業員を対象に試し、転倒・転落の検知などで一定の効果を得たとしています。
キリンビールとユビテックの2021年8月19日の発表出典: キリンビール株式会社・株式会社ユビテック(報道用の素材)
ユビテックによると、神戸工場では実証実験のあと、約100台のスマートウオッチを入れ、2022年6月から本格的に使っています。従業員からは「転倒などした場合に管理者に通知が出るので安心度が増す」という声があったとしています。
たとえば、大阪や兵庫の中小の工場で、夏場の熱中症や、ひとりで作業しているときの転倒が心配なら、カメラと腕時計のどちらが自分たちの現場に合うかを、こうした事例を手がかりに考えられます。
機械の止まる仕組みがあっても、いつもの手順は守っといてな。