「消費者庁から協力を頼まれた」と名乗る調査会社が、No.1表示をしている会社に有料の調査を勧めるメールを送っています。消費者庁は2026年10月19日、こうしたメールについて注意を呼びかけました。広告で「満足度No.1」などをうたっている店や会社は、返信する前に中身を確かめてください。
何があった? 消費者庁を名乗って働きかけるメール
消費者庁によると、ある調査会社が複数の事業者に対し、消費者庁から任意の協力依頼を受けたとして、事業者に働きかけるメールを送っていることが分かりました。
メールの件名は「【大至急】【有料調査のご提案】」などです。本文には、次のような内容が書かれていました。
- 調査会社が、消費者庁表示対策課指導係から電話で任意の協力依頼を受けた
- その依頼を受けて、No.1表示をしている企業に順に連絡している
- 表示を続けるなら、できるだけ早く根拠を整理するよう勧める
- 調査会社への返信を求める
これに対し消費者庁は、表示対策課指導係は事業者がこれから行う企画の事前相談を受け付けている部署だと説明しています。既に行われた表示について、相談を受けたり指摘したりすることはないとしています。
消費者庁が10月19日に出した注意喚起のページ出典: 消費者庁(引用)
メールを送った調査会社の名前は公表されていません。この件の問い合わせ先は、消費者庁表示対策課(03-3507-9233)です。
No.1表示はどんなときに問題になる?
消費者庁は2024年9月26日に「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表しています。根拠がなく事実と違うNo.1表示は、景品表示法の不当表示(実際より著しくよいと消費者に思わせる表示)として問題になります。
報告書は、No.1表示が合理的な根拠に基づくといえるには、次の4点をすべて満たす必要があるとしています。
- 比較する商品・サービスを適切に選んでいる。問題になる例: 市場の主要なサービスの一部か全部が、比較対象に入っていない
- 調査する相手を適切に選んでいる。問題になる例: 「顧客満足度No.1」とうたうのに、サイトの印象を聞く調査しかしていない。「医師の○%が推奨」とうたうのに、商品を評価するのに要る専門と違う医師に聞いている
- 公平な方法で調べている。問題になる例: 自社の商品を選択肢のいちばん上に固定する、No.1になった時点で調査をやめる
- 表示の中身と調査結果が合っている。問題になる例: 印象を聞いただけの調査の結果に注記を付けて、「顧客満足度No.1」とうたう
ウェブサイトを見た印象だけで答えさせる調査は、報告書で「イメージ調査」と呼ばれています。注記を付けても、「顧客満足度No.1」という表示と結果が合っていないことに変わりはないとしています。
報告書が示した「勧誘されてNo.1表示」の実態
報告書によると、No.1表示をした理由として、調査会社やコンサルティング会社から勧誘や提案を受けたことを挙げる広告主が多くいました。費用の安さ(1フレーズ10万円から数十万円)を魅力に感じたという答えも多かったとしています。
景品表示法に違反しないことを強調して、不適切な調査を勧める調査会社も見られました。話を聞いた広告主の多くは、根拠にしている調査の質問項目や比較相手を把握していなかったといいます。
消費者庁長官は報告書を公表した日の記者会見で、景品表示法の法的な責任はあくまで広告主にあると説明しています。調査会社がどう言っていても、表示の責任を負うのは表示した店や会社です。
暮らしと仕事への影響
今回のメールは、No.1表示をしている会社に「根拠の整理」を勧め、有料の調査を提案する内容です。消費者庁の名前が出ると、急いで返事をしたくなるかもしれません。
ただ、消費者庁は、指導係が既に出した表示について連絡することはないとしています。メールに書かれた依頼の話をそのまま信じて、有料の調査を申し込む前に、立ち止まって確かめることが大切です。
買い物をする人にとっても、No.1表示は商品選びに影響しています。報告書の消費者アンケートでは、No.1表示が買うかどうかの判断に「かなり影響する」「やや影響する」と答えた人が約5割でした。
店や会社が今日からできること
- 消費者庁の名前を出す勧誘メールには、すぐ返信しない: 気になるときは、メールに書かれた連絡先ではなく、消費者庁表示対策課に問い合わせます。
- 自社のNo.1表示の根拠を見直す: 上の4つの条件に照らし、調査の質問項目、比較した相手、答えた人を手元の資料で確かめます。
- 根拠を見る人に示す: 報告書は、調査方法の概要を広告に書くか、QRコードで確かめられるようにすることが望ましいとしています。
- これから出す広告は事前に相談する: 消費者庁表示対策課指導係は、これから行う企画の事前相談を受け付けています。
大阪・関西では 府も事業者向けの説明会
大阪府は、府内で事業をする事業者や事業者団体に向けて、景品表示法の説明会を開いてきました。2025年1月23日の回は、内容に「No.1表示」やステルスマーケティングの規制を挙げ、公正取引委員会の担当職員が講師を務めました。
2025年10月3日の回は、公正取引委員会 近畿中国四国事務所の取引課長が講師で、ステルスマーケティングの規制を中心に説明しました。府のページには、配布した資料「事例でわかる景品表示法」へのリンクが載っています。担当は、府民文化部消費生活センター事業者指導グループです。
たとえば、ネット通販で「地域No.1」「満足度No.1」とうたっている店なら、こうした公的な資料と消費者庁の報告書を見比べて、自分の表示の根拠を確かめておけます。急ぎの有料の提案に返事をするのは、そのあとでも遅くありません。
「大至急」と書かれたメールほど、ひと呼吸おいて確かめといてな。