AIの安全性の確かめ方を検討する機関「AIセーフティ・インスティテュート(AISI)」が2026年10月6日、「事業実証ワーキンググループ・ビジョンペーパー(第2.0版)」を公開しました。対象の分野に、教育とジオAI(地図や位置の情報とAIの組み合わせ)が加わりました。中身を公式の資料から整理します。
AISIは、AIの安全性の評価手法や基準を検討する機関
AISIは2024年2月14日に発足し、事務局は情報処理推進機構(IPA)に置かれています。公式サイトの説明は次のとおりです。
AIセーフティ・インスティテュート (AISI)は、安全・安心で信頼できるAIの実現に向けて、AIの安全性に関する評価手法や基準の検討・推進を行うための機関です。
出典: AIセーフティ・インスティテュート「AISIについて」
ワーキンググループは、分野ごとに安全の確かめ方を作る
事業実証ワーキンググループは2025年3月に設置されました。民間の事業者を中心に、AIの安全性の評価(AIセーフティ評価)を広め、AIの利用を進めることが目的です。
ビジョンペーパーは、この活動のめざす姿をまとめた文書です。ゴールは、利用者がリスクを理解していることを前提にした評価の枠組みを、産業界・行政・専門家が協力して整えることです。体制は、分野ごとの作業班(SWG)と、分野をまたぐ作業班の組み合わせです。
AISIの概要版にある事業実証WGの体制図。分野別と分野横断の作業班を組み合わせる出典: AIセーフティ・インスティテュート 事業実証ワーキンググループ「ビジョンペーパー(第2.0版)概要版」6ページ(引用)
第1版から変わったのは、教育とジオAIの追加
第1版は2025年6月30日の公開で、分野別の対象はヘルスケアとロボティクスでした。第2.0版の更新履歴には、既存の作業班のビジョンを更新し、新設の分を書き足したとあります。新設は教育とジオAIで、作業班は4つから6つになりました。
| 作業班 |
扱うもの |
ペーパーにある動き |
| ヘルスケア |
医療機関の書類作成の支援、健康管理アプリなど |
2026年4月にガイドを公開 |
| ロボティクス |
飲食店などの搬送ロボット、配送ロボット |
2026年7月にガイドを公開 |
| 教育(新設) |
初等中等教育で使う生成AI |
2026年度が活動の初年度 |
| ジオAI(新設) |
地図や位置の情報とAI |
2026年度は建物の2次元の地図でガイドラインを検討 |
| データ品質 |
AIに使うデータの質 |
評価ツールを検討中 |
| 適合性評価 |
基準に合うかを確かめる仕組み |
制度の設計に取り組む |
これからの予定は、現場で使って直す段階へ
ロードマップは3段階です。2025年度は、作業班の立ち上げと評価ガイドの策定でした。2026年度〜2027年度は、ガイドを現場で使い、評価の方法を細かく直す段階です。AIエージェント(自律的に動くAI)への対応も挙げています。
概要版のロードマップ。2026年度〜2027年度の中期的な取組みが赤い枠で示されている出典: AIセーフティ・インスティテュート 事業実証ワーキンググループ「ビジョンペーパー(第2.0版)概要版」7ページ(引用)
暮らしと仕事への影響
ペーパーが想定する読み手は、AIを作る事業者、AIを導入する企業や自治体、政策の担当者です。暮らしに近い記述は次の3つです。
- 健康: 健康管理アプリなどで、不正確な答えが利用者に直接影響することをリスクに挙げています。
- 子どもの学び: AIへの情緒的な依存や、試行錯誤の機会を失うことをリスクの例に挙げています。
- ロボット: 衝突などの物理的なリスクに加え、威圧感などの心理的なリスクも整理しています。
中小の会社に関わる記述もあります。ロボティクスの章は、食品や物流、中小企業などでロボットの活用が増えつつあると書いています。データ品質の作業班は、特別な計算環境や高度な技術スキルが要らない評価ツールを検討中です。金融の作業班はありません。
国のAIのルール全体は、国のAIのルールは暮らしと仕事にどう関わる? AI法と基本計画の要点にまとめています。
関西の暮らしと仕事での使いどころ
ペーパーは、ロボットを模擬の環境で評価する例に、川崎重工業が運営する共創拠点「KAWARUBA」での対話型ロボットの実験を挙げています。川崎重工業は東京と神戸に本社を置く会社です。KAWARUBAの場所は東京都大田区です。関西の自治体や大学の名前は、ペーパーに出てきません。
たとえば、搬送ロボットを入れたい飲食店は、公開済みのガイドを、提供元への質問づくりの手がかりにできます。「どのリスクを、どう確かめたんか」を聞くとこから始めたらええで。